忘れえぬ人

神在琉葵(かみありるき)

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彼女は一瞬酷く驚いたような顔をしたが、それは畏れや嫌悪とはまた少し違ったものだった。




「驚かれましたか?」

「はい。
悪魔にお会いするのは初めてのことなので…」

相変わらずの率直な答え…




「私が怖いですか?」

「正直言ってよくわかりません。
悪魔は、悪い者、良くない者だという認識はありますが、あなたはとてもそんな風には思えない…
でも、会ったばかりでその人の本質が見抜けるはずもない。
ですから、どのように考えれば良いのか、私にはまだよくわかっていないのです。」




あまりの正直さに、私は思わず肩を震わせてしまった。
なんと面白い女なのだろう。
この女は、まさに子供のごとく純真で、嘘や駆け引きのひとつも持ち合わせてはいない。




「あの…私、なにか……」

「あ…あぁ…あなたがあまりにも正直に話されるものですから…」

「すみません。
私、いつもこうなんです。」

はにかんでうつむいた彼女があまりにいじらしくて…
私は抱きしめたくなる衝動を懸命に押さえ込んだ。
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