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満月と鏡
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「晴美、今日は疲れただろ?」
「ううん、全然…あなたは?」
「僕も全然…却ってテンションが高くなってるくらいだよ。」
私達は、ハネムーンに行くために、佐々木さんの運転する車で、空港に向かっていた。
私も今日から『佐々木さん』だっていうのに、まだ佐々木さんのことを名前で呼べない。
「空港で食事して行く?」
「そうだね。一応食べておこうか。」
そんな他愛ない会話でさえも、なんだか嬉しい。
どうやらまだ結婚式の余韻が残ってるみたいだ。
「晴美…僕、君に謝らなきゃいけないことがあるんだ。」
「謝る?何なの?」
唐突に佐々木さんが思いがけないことを言い出したから、私は急に不安にかられてしまった。
「実はね…今日、式が始まる前に晴美の控室に行ったんだ。
君のウェディングドレス姿がどうしても見たくてね。」
「あぁ…」
佐々木さんの言葉に、私はほっとして胸をなでおろした。
「……ヨーロッパあたりでは結婚前の花嫁を見てはいけないっていうものね。
でも、私はちょうど出てたし、会ってないから大丈夫よ。気にすることないわ。」
「そうじゃないんだ。
実は、あの控室に入った時、テーブルの上にあった手鏡を落としてしまったんだよ。」
「えっ!?」
そのことは私も気になっていた。
私の大切な満月鏡が、控室に見当たらなかったから。
でも、きっとスーツケースのどこかに紛れ込んでるものだと思ってた。
でも、落としたってことは……
「ごめんよ。君が大切にしてるあの手鏡を落として割ってしま…あ、あぁーーーっ!」
佐々木さんの叫び声に、その視線の先を見てみたら…
そこには、大きなトラックが迫っていた。
ドライバーは青くなった顔を強張らせ、目を大きく見開いて…
それが私達の見た最後の光景だった。
「晴美、今日は疲れただろ?」
「ううん、全然…あなたは?」
「僕も全然…却ってテンションが高くなってるくらいだよ。」
私達は、ハネムーンに行くために、佐々木さんの運転する車で、空港に向かっていた。
私も今日から『佐々木さん』だっていうのに、まだ佐々木さんのことを名前で呼べない。
「空港で食事して行く?」
「そうだね。一応食べておこうか。」
そんな他愛ない会話でさえも、なんだか嬉しい。
どうやらまだ結婚式の余韻が残ってるみたいだ。
「晴美…僕、君に謝らなきゃいけないことがあるんだ。」
「謝る?何なの?」
唐突に佐々木さんが思いがけないことを言い出したから、私は急に不安にかられてしまった。
「実はね…今日、式が始まる前に晴美の控室に行ったんだ。
君のウェディングドレス姿がどうしても見たくてね。」
「あぁ…」
佐々木さんの言葉に、私はほっとして胸をなでおろした。
「……ヨーロッパあたりでは結婚前の花嫁を見てはいけないっていうものね。
でも、私はちょうど出てたし、会ってないから大丈夫よ。気にすることないわ。」
「そうじゃないんだ。
実は、あの控室に入った時、テーブルの上にあった手鏡を落としてしまったんだよ。」
「えっ!?」
そのことは私も気になっていた。
私の大切な満月鏡が、控室に見当たらなかったから。
でも、きっとスーツケースのどこかに紛れ込んでるものだと思ってた。
でも、落としたってことは……
「ごめんよ。君が大切にしてるあの手鏡を落として割ってしま…あ、あぁーーーっ!」
佐々木さんの叫び声に、その視線の先を見てみたら…
そこには、大きなトラックが迫っていた。
ドライバーは青くなった顔を強張らせ、目を大きく見開いて…
それが私達の見た最後の光景だった。
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