ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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ファミリー・トリップ

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「お父さん!お父さん!」

どんなに大きな声で呼んでも、父の大きな瞳が開くことはなかった。



父が亡くなった。
急な病で、苦しむこともなく極めて呆気なく…



すでに、母は私がまだ子供の頃に他界しており、兄弟もいない。
長い時を父と二人っきりで暮らして来たから、その悲しみは海よりも深い。
これから先、たった一人で生きていかなくてはならないと思ったら、目の前が真っ暗になる想いだ。



 明るくて、お茶目でどこか子供みたいだった父…
仕事の都合で留守も多かったけど、一緒にいる時は、目いっぱい愛情を注いでくれたから寂しい思いはしなかった。
 父と過ごした日々の鮮やかな記憶が、胸に去来する。



幸い、父は資産家だったから、お金の心配だけはない。
だけど、いくらお金があったって、それがなんだというのだろう。
私はそんなものよりも家族や温かい家庭があった方が良いのに。



しばらくして、私の前に一人の男性が現れた。
それは、弁護士だった。
父は資産家だったから、遺書でも残していたのかと思ったら少し違った。



「亡くなられたお父様から、お預かりしているものがあります。」



それは一通の白い封筒だった。
自分の身に何かあった時には、その封筒を私に渡すようにと言われていたらしい。



封を開けてみると、小さな鍵とメモが出て来た。
それは、駅前にある銀行の貸金庫の鍵だと書いてあった。
私は、次の日、早速、その銀行を訪ねた。
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