ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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裏切り

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(そうだ…)



その時、俺の頭にあることが思い浮かんだ。
 妻が、しょっちゅう宝くじを買っているということだ。



そうだ…きっと、宝くじが当たったんだ。
そうでなきゃ、1億なんて金が入るはずがない。



しかし、それならなぜ妻はそのことを俺に言わなかったのだろう?
それも約一年もの間…



その答えは簡単だ。
つまり、妻は金に目が眩んだのだ。
 俺とはうまくいってると思っていたが、金のことは別だということだ。
 世間でもそういう話は良く耳にする。
 金が絡むと、人が変わると。



 妻はそんな人間ではないと思っていたが、それは俺の買い被りだったようだ。



 (あ…)



そういえば、今年の初め…
妻は、ダイヤモンドのネックレスが懸賞で当たったと大喜びをしていた。
 俺はそのことを素直に信じてしまったが、あれはきっと当たった金で買ったのだ。



そうだ、あの時、妻は、服も新調していた。
いつもは滅多に服を買わない妻が…
パートの時給が上がったとか言ってたが、それもきっと1億が入ったからなんだ。



 今日の旅行だってそうだ。
 何年か前から、友達と一緒に積み立てをしていたなんて言ってたが、そんなことはきっと嘘だ。
 格安の旅だっていうのも、きっと嘘に違いない。



そう思ったら、なんだか腸が煮えくり返るような想いだった。
 俺はずっと妻のことを信頼してきた。
 疑ったことなんて一度もなかった。
 逆に私が宝くじが当たったなら、俺はきっと一番に妻にそのことを伝えただろうに…



(それなのに、あいつは……)



 悔しい。
 俺はずっと妻に騙されていたのか?
 信頼しているふりをして、心の底では馬鹿にされていたのか?
 確かに、俺は高卒で、これといった特技もなく、二流の会社にしか勤められなかった。
 妻はそんな俺を心の底で笑っていたのだろうか?
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