ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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三島誠二side2

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(ふふ…あいつ、やっぱりビビってやがる。)



 藤崎は、後ろを何度も振り返りながら、怯えた様子で歩いて行く。
 俺は、藤崎をさらに追い詰めるため、毎日、奴を尾行することにした。
ただ、奴の後を歩いているだけなのだから、犯罪にはならない筈だ。



 今日で4日目…
最初は、気のせいかと思っていたとしても、4日も続くと、尾行されてることに気付く筈だ。



 (怯えろ、怯えろ…
お前なんて、この世からいなくなってしまえ!)



「やっぱりお前か!」

「えっ!」



 曲がり角を曲がった途端、待ち構えていた藤崎と鉢合わせした。
 奴は、俺のことを知ってるようだ。



 「お前だな!
 最近の嫌がらせはお前の仕業だろう!」

 大人しい男だと思っていたが、藤崎は意外な程感情的で俺に掴みかかって来た。



「な、何をする!や、やめろ!」

 力も強い。
 俺は必死に抵抗したが、藤崎はなかなか手を離さなかった。



 「やめろって言ってるだろ!」

 俺は、ポケットに忍ばせていたナイフを手にした。
 藤崎の顔色が変わり、俺から離れた。
 俺に歯向かおうだなんて十年早い!



 「この野郎!」

 「何っ!?」

 藤崎は、常軌を逸した瞳をして、再び俺に掴みかかって来た。
さっき以上の馬鹿力だ。
 俺は、奴を振り払うためにナイフを振り回したが、奴は身軽な動きでそれを交わす。



 俺達は、盛りの雄猫達みたいに激しく揉み合い…そして、そのうち、ナイフが俺の手から離れたと思ったら、俺は、不意に今まで感じたことのない苦しさを感じ…



「う…うぅっ…」

 「あ…あぁーーーーっ!」



藤崎は悲鳴を上げ、俺の傍から駆け出した。



 (な、何が…どうなった…?)

 俺の胸から、生温かいものがどくどくと流れ出していた。



 「うっ…」

 薄れゆく意識の中で、俺は月明りに照らされた腕時計に目をやった。
さっきの格闘の際にぶつけたようで、文字盤には深い亀裂が入り、針は止まっていた。



(10時…15分……)



 俺はそれを最後に意識を失い……



もう二度と目が覚めることはなかった。

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