ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
上 下
9 / 89
この世で一番醜い顔

しおりを挟む
「あれ…圭、まだやってたのか。」

 「まぁな…」

 「おまえも本当に好きだなぁ。」

そう言って、山下は肩をすくめた。
 俺も、苦笑するしかなかった。



 誰から見ても、俺は馬鹿でおかしな奴だろう。
 俺の頭の中にあるのは、常に特殊メイクのこと。
 仕事が終わってもすぐに帰るに気はなれず、暇さえあればメイクアップの研究をしている。
そんなだから、いい年をして、彼女のひとりもいない。
 出来るはずがない。
たとえ休みの日でさえも、俺は部屋に籠って特殊メイクアップなのだから。
 俺は、それしか興味がないんだから。



 別に、メイクアップアーティストとして、有名になりたいわけじゃない。
 俺は、とにかく満足したいだけなんだ。
 今まで誰もなしえなかった程の、これはすごい!と心の底から満足出来るメイクを仕上げたい。
 俺の夢はただそれだけなんだ。
 簡単なようで難しいその夢に向かい、俺は日々努力を重ねる。



 今、目標にしているのは、世界で最も醜い顔を作ることだ。
メイクアップの本来の目的は美しくすることだが、特殊メイクなのだから、その逆のことをしてみたくなったんだ。
 見た者が顔を背けてしまうどころか、あまりの恐怖に目を離せなくなるような…そんな顔を作ることに俺は熱中している。
 痛ましい傷を付けてみたり、歪めてみたり…
でも、違う。
こんなのはまだありきたりなものでしかない。
 俺の思う醜い顔は、まだ作りきれない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...