ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
上 下
3 / 89
大好きな伯父様

しおりを挟む
罪悪感のようなものはあったが、それよりも好奇心と愛しさが勝り、理佐子は日記帳を手に取った。



 (あら…?)



ページを開いた途端に、理佐子はそれが見慣れた伯父の筆跡とは違うことに気が付いた。
もしかしたら、伯父の知り合いか誰かの日記帳なのか?
だとしたら、そんなものをのぞくのは良くない…
そうは思ったが、読み進めれば誰のものかもわかるかもしれない。
 理佐子はほこりを払って椅子に腰掛け、日記帳を読み進めた。



やはり、それは伯父のものではないと理佐子は確信した。
 文字のことだけではなく、書いてある内容が、理佐子にはまるでなじみがなく、しかも、金儲けの話等、伯父の性格からして書きそうにない内容ばかりだったからだ。
そこには、人を罵る言葉や愚痴等もたくさん書いてあり、理佐子は胸が悪くなる想いだった。



もう読むのはやめようと思った時、理佐子の目にある文章が留まった。
それは、理佐子の両親の事故死のことだった。
さらに、理佐子を引き取るのは嫌だが、理佐子に着いて来る遺産のために引き取らざるを得ないという話が書いてあったのだ。



 (だったら、この日記帳はやっぱり伯父様の?)



 伯父は、どんな時も理佐子を優しく、時には厳しく、実の親のような愛情を持って、理佐子を育てた。
それが、遺産目当てだったなんて、到底、理佐子には信じられなかった。



 日記帳にはさらにしばらく理佐子の悪口が続いていた。
 愛想がない、可愛げがない、暗い…
日記を閉じようと思うものの、つい気になってページをめくってしまう。
でも、さすがに気分が悪くなり、理佐子が日記を閉じようとした時…



『信じられない。私には双子の兄弟がいたんじゃないかと思った程だ。』



その文に興味を惹かれ、理佐子はなおも日記を読み続けた。
 伯父は、ある時、町で自分にそっくりな人物に出会い、酔っていたこともあって家に連れて帰って来たという話が書いてあった。
その人物は、貧乏だが頭が良く、人の善い優しい奴だと書いてあった。



 (だったら、あの伯父様は…)



その短い文章だけで、理佐子はすべてを理解した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...