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side紗羽

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 「今日は来てくれてありがとう。」

 「いえ……」



 会話が続かない。
お互いに俯いたまま、気まずい沈黙が流れる。
 岡本君に会えることは、嬉しいはずなのに、なぜだか素直に喜べなかった。



 「今度またコンテストが…」
 「この前、美和が…」



まずいタイミングで二人の声が重なった。



 「あ…コンテストがどうしたの?」

 「え?あ、あぁ、また水彩画のコンテストがあるんだ。」

 「そ、そうなんだ……」



そして、また沈黙……



気まずい沈黙を破ったのは、岡本君の方だった。



 「紗羽…やり直すことは出来ないだろうか?」

 「え……?」



 (やり直す…?)



 「やり直すって…何を?」

 「僕達の仲を…」

 「えっ!?」



 思いがけない言葉に、私はすぐには返事が出来なかった。



 「……だめかな?」

 「岡本君…悪い冗談はやめて。
びっくりしちゃったわ。」

 「僕は本気だ。」



 岡本君の真っすぐな視線…私は、それを受け止めることが出来なくて、そっと俯いた。



 「……あなたは、責任を感じてるだけなのよ。
そんなことは考えないで。
 私が決めたことなんだから。」

 「そうじゃない。
 僕は、改めて君に惹かれてる。
いや…もしかしたら、あの時の気持ちはずっと小さな火種を灯らせ続けていたのかもしれない。
 君に再会したことで、その火種はまた強く燃え上がったんだ。」



ストレートな告白に、胸が震えた。
 学生の頃は、お互い、告白をせずにごく自然に付き合い始めた。
 愛の言葉がこんなにも熱いものだったということを、私はこの年になって初めて知った。



 「わ、私……」

すっかり舞い上がっていた。
 私が十代だったら、すぐに良い返事をしていただろう。
だけど、今の私にはそうは出来ない。
 本音だけでは生きられない年になっているから。
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