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「ご馳走様でした。」



 結局、私はタイカレーセットをぺろりとたいらげ、食後にマロンパフェまで食べてしまった。
 心はこんなに傷付いてるのに、どうしてお腹はすくんだろう?
どうして、こんなに食べられるのか、自分でも不思議だった。



 「じゃあ、そろそろ行きましょうか。」

 食事代は、遠慮したけど、岡田さんが払ってくれた。
そのあたりはけっこうスマートだ。



 「どうします?お家の方まで送りましょうか?
それとも、飲みにでも行きますか?」

まだ帰りたくはなかった。
ひとりになるのが怖かった。



 「少しドライブでもしませんか?」

 「……良いですよ。」

 岡田さんは、運転だけはうまい。
そういえば、趣味はドライブとか言ってたような…あれ?違う人だったかな?
 夜の街は煌びやかだけど、特に綺麗だとも何とも思わない。
これが大樹君と一緒だったら、きっと見える景色も違ってたんだろうな…そんなことをつい考えてしまった未練がましい自分に腹が立った。



 (あ……)




 「……岡田さん、このまままっすぐ行って下さい。」

 「え!?」

 「構いませんから。」

 驚いたような顔をする岡田さんに、私は感情のこもらない声で返事をした。



その先にあるのはラブホテル。
なぜ、そんなことを口走ってしまったのか、自分でもわからない。 

 自棄になっていたのか、失恋の痛手でおかしくなっていたのか、或いは寂しくてたまらず、人恋しくなっていたのか… 

そう…相手は誰でも良かった。 
 男性でありさえすれば…
岡田さんには失礼なことだけど、岡田さんだって男だ。
それに、私には少なからず好意を抱いてるはずだから、断ることはないだろう。 
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