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「……王子様、ここがその娘の家にございます。
おい、リン…起きてるか?」
村長は、けたたましく扉を叩きます。
「もう良い。
あとは私一人で行く。」
「は、はい。では、失礼致します。」
扉を開くと、中は日中だというのに薄暗く空気がじっとりと湿っていました。
「邪魔をするぞ。
ここにリンという者はいるか?」
「……はい。こちらに……」
か細い声が奥の部屋から聞こえ、アーロンはその声の方に歩いて行きました。
粗末な寝具に包まれて、横たわる女性は、痩せて青白い顔色をしていました。
その女性を見た時、アーロンの心臓はいまだかつて無かった程、激しく脈打ちました。
(なんと美しい娘だ…!
この世にこれほどまでに美しい娘がいようとは…
私の妃はこの娘しかいない!)
アーロンは、リンを見て、不思議な程強く惹きつけられました。
彼の心に、熱い炎が灯ったのです。
「どなた……ですか?」
「私は、アーロン王子だ。」
「お、王子様…!?ま、まさか、あなたは…」
驚いて、体を起こそうとするリンを、アーロンは優しく制しました。
「無理をするな。
そのままで良い…」
「も、申し訳ございません…」
「そなた…具合が悪いらしいが、どこが悪いのだ?
医者には診せておるのか?」
「はい、それが……」
リンが話しかけた時、ベッドの下から猫が姿を現しました。
痩せこけて、毛が抜けまだらになった猫でした。
「なんと薄汚い猫だ!
よもや、おまえがこの者に何か悪い病気を移したのではあるまいな!
今すぐここから出て行け!」
アーロンは、乱暴に猫を追い立てました。
「……王子様、ここがその娘の家にございます。
おい、リン…起きてるか?」
村長は、けたたましく扉を叩きます。
「もう良い。
あとは私一人で行く。」
「は、はい。では、失礼致します。」
扉を開くと、中は日中だというのに薄暗く空気がじっとりと湿っていました。
「邪魔をするぞ。
ここにリンという者はいるか?」
「……はい。こちらに……」
か細い声が奥の部屋から聞こえ、アーロンはその声の方に歩いて行きました。
粗末な寝具に包まれて、横たわる女性は、痩せて青白い顔色をしていました。
その女性を見た時、アーロンの心臓はいまだかつて無かった程、激しく脈打ちました。
(なんと美しい娘だ…!
この世にこれほどまでに美しい娘がいようとは…
私の妃はこの娘しかいない!)
アーロンは、リンを見て、不思議な程強く惹きつけられました。
彼の心に、熱い炎が灯ったのです。
「どなた……ですか?」
「私は、アーロン王子だ。」
「お、王子様…!?ま、まさか、あなたは…」
驚いて、体を起こそうとするリンを、アーロンは優しく制しました。
「無理をするな。
そのままで良い…」
「も、申し訳ございません…」
「そなた…具合が悪いらしいが、どこが悪いのだ?
医者には診せておるのか?」
「はい、それが……」
リンが話しかけた時、ベッドの下から猫が姿を現しました。
痩せこけて、毛が抜けまだらになった猫でした。
「なんと薄汚い猫だ!
よもや、おまえがこの者に何か悪い病気を移したのではあるまいな!
今すぐここから出て行け!」
アーロンは、乱暴に猫を追い立てました。
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