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 「えーーーーーっ!」



 「ジョッシュ、驚かせてすまない。」



 「そ、そ、そんなぁ……」



なんと、アンリはこの国のアンソニー王子だった。
この所、アンリは何度も命を狙われ、しかし、その犯人がどうにも絞りこめなかったのだという。
それで、ウィリアム国王はアンリを守るために旧友の父さんに預け、その間に犯人を探していたのだけれど、それでもなかなか特定できず、困った末に罠をかけたのだという。
あやしいと思われる数人の人物にアンリの行き先を教え、そこで敵の出方を見る計画になっていたようだ。
 犯人が動くとしたら暗くなってからだから、それまでに僕達は家から離れ、家には剣士達を配備してそこで一網打尽にする手筈だったのに、よりにもよってそんな時に僕とアンリがでかけてしまい、それに気付いた父さんや警備隊の人達があちこちを探していた所だったらしい。



 「ア、ア、アンリが……ア、アンソニー王子…?」

 「念には念をってことだよ。
 女の子のふりをしていた方が、いざという時にも相手の目を眩ませやすいってね。」



そうか…だから、母さんは父さんの浮気相手の子が来てもあんなに落ちついていられたのか…
身体が弱いって言ったのも、アンリを外に出さないための口実だったんだな。
でも、相手は王子様だぞ。
 王子様が家に来ることになったら、やっぱり普通あんな風には落ち着いていられないんじゃないだろうか?
まさか、母さんも僕と同じで何も知らされてなかった…?
いや、そんなことはないだろう。
っていうか、そんなことならどうして僕にも教えてくれなかったんだ!



 「ジョッシュ、本当に君には世話になったな。
いつでも、城の方へ遊びに来てくれたまえ。
また、トランプで遊ぼうじゃないか。」

 「……は、はい!」



あのアンリが、王子様…
僕の自慢のあの綺麗な妹が、王子様…



馬に乗って走り去るアンソニー王子の後姿をみつめながら、僕はまだ半分夢の中にいるような気分だった。
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