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「その腰に下げているのは剣だな?
ずいぶんと強そうな剣士様だ。」

 別の男が言ったその一言で、その場に笑いの渦が巻き起こった。



 「可哀想だが、俺達の顔を見た以上、剣士様にも死んでもらうしかない。」

 男の一人が、腰の剣を引き抜き、僕を見てにやりと笑った。
ぞっとするような冷酷な笑みだ。



 「そうだ!アンリちゃんを斬ったのはこの剣士様ってことにしたらどうです?」

 「それは良いな!」



 (ア、アンリを斬るだって?
じゃあ、こいつらの狙いはアンリなのか!?)



 「畜生!そんなこと、させてたまるか~!」

 僕は咄嗟に剣を引き抜き、男の剣を叩き落した。
アンリはそれを目にも停まらぬ早さで拾い上げ、両手で剣を構えた。



 「このガキ…なめた真似を…!」

 一瞬、呆気に取られていた男達が、一斉に剣を手に構えた。



 男達は、戦いに慣れているのか、隙がない。
さっきはあまりに突然のことだったし、僕らが子供だということで奴らも油断してたんだろうけど、今はさっきとは違う。
 本気で僕らを殺ろうとしている。
こんな奴らに適うはずはないけど、アンリだけでもなんとか守らなきゃ…!
 倒すのは無理でも、あいつらの足を狙い、その隙にアンリを逃がすことは出来る筈だ。



 「アンリ、下がって!」

 「君こそ、下がれ!
これは私の問題だ!」

いつもとは別人のようなアンリの様子に僕は驚いたが、何かを考えている暇はなかった。
 男の剣がアンリに向かって振り下ろされたんだ。
だけど、アンリはそれをうまく受け流し、そればかりか、男の脇腹を斬り付けた。
 男の身体から流れ出た赤い血に、僕の鼓動は速さを増した。
 今まで剣の稽古をしていて少し怪我をしたことはあったけど、それは本当にかすり傷でこんな本格的な血を見たことはなかったから。
だけど、アンリはそんなことに少しも動揺することなく応戦している。



 (アンリを守らなきゃ!)



 僕の心に燃えあがったそんな熱い想いが、怖さを凌いだ。



 「アンリに手を出すな~!」



 僕は大きな声を上げ、男の一人に向かって剣を振り下ろした。
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