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 「ど、どういうこと!?」

 「……だから、アンリはおまえの妹だからよろしくと言ったんだ。」

 父さんのその顔はとてもふざけているようには思えなかった。



 「い、妹って…」

 「ジョッシュ、アンリのことをよろしくね。」

 母さんの表情は僕とは裏腹にとても穏やかで…僕は、信じられないような気持ちでそんな母さんの顔をみつめた。



 「アンりと申します。
どうぞよろしくお願いします。」

 丁寧だけどよそよそしい挨拶と共におずおずと差し出された片手に、僕は反射的に手を伸ばしていた。
 真っ白で華奢な長い指をしたその手の持ち主は、有名な絵画から抜け出て来たような絶世の美少女だ。
こんな綺麗な子が僕の妹だなんて…
父さんも特別面白い顔をしてるわけじゃないけど、でも、間違っても男前って程でもない。
そんな父さんから、どうやったらこんな綺麗な子が生まれるんだ?
あ、そうか……浮気相手がきっと綺麗な人だったんだな。
……って、真面目で堅物だと思ってた父さんが浮気してたなんて…それも十年以上前からずっとだなんて、僕にはかなりの衝撃だった。
それよりも母さん…いくらこの子の母親が亡くなって一人ぼっちになって可哀想だからって、夫がよその女に生ませた子をなぜそんなに優しく迎えることが出来るんだ!?
 普通なら髪振り乱して怒りまくって、父さんに往復ビンタの一つや二つお見舞いしてやってもおかしくないのに…
普段からのんびりしてはいるけど、まさか、母さん…まだ、事の重大さがわかってないんじゃないだろうな。



 「さぁ、アンリ、向こうで夕飯を食べましょう。
 口に合わないかもしれないけど、たくさん食べてね。」

 「……どうもありがとうございます。」

アンリは、母さんに促され、しずしずと着いて行く。
なんていうんだろ…綺麗なだけじゃなくて、物腰や言葉遣いがとても上品だ。
きっと、この子の母親がそういう人だったんだろう。
ざっくばらんな我が家とはえらい違いだ。
 男ってものは、愛人には妻と違うタイプを選ぶもんなんだろうかと少し生意気なことを考えながら、僕は首を捻った。
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