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修理屋の願い事
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「礼を言われるようなことは何もない。
僕はチクタクの修理屋。
チクタクを直すのは僕の仕事だからな。
それじゃあ…」
「あ、待って!」
小さく片手を上げ、その場を離れようとした修理屋さんをシュゼットが引き止めました。
「……なんだ?」
「何かお礼をさせて下さいな。」
「……さっきも言った通り、僕はチクタクを直すのが仕事なんだ。
お礼なんて……」
「遠慮なさらないで。
うちは幸いお金にはゆとりがあります。
ほしいものをなんなりとおっしゃって下さいな。」
にっこりと微笑むシュゼットとは裏腹に、修理屋さんは不機嫌な顔に変わりました。
「……そうか。君がそこまで言うのなら、お礼をいただくことにしよう。
どんなものでも良いんだな?」
「ええ。どうぞ。」
「それでは……僕の妻になってくれ。そして誓いの口付けをしてくれ。」
「えっ!」
シュゼットは大きく目を見開き、修理屋さんをみつめていました。
私も修理屋さんの言葉には酷く驚かされました。
「見ての通り、僕はこんな薄気味の悪いとかげだからね。
誰も僕のことを好きになってくれなくてね。」
そう言って、修理屋さんはにやりと笑い、短い舌をちょろちょろと出しました。
それを見たシュゼットは、顔を背け、俯きました。
「あ、あの…他のものではどうでしょう?
たとえばお金とか屋敷とか……」
「……そんなものは必要ないね。
僕が本当にほしいのは……いや、そんなことはどうだって良い。
……良いか!?出来もしないことを偉そうに言うんじゃないぞ!」
修理屋さんは酷く怒っていましたが、それよりも、その言葉に、私はたとえようのない悲しみのようなものを感じたのです。
「では……」
「待って下さい。」
再び、その場を離れようとした修理屋さんを引き留めたのは私です。
「……まだ何かあるのか?」
うんざりした顔をする修理屋さんに、私は近付いて行きました。
「な、何を……」
修理屋さんの間近に着いた私は、心を込めて言いました。
「あなたの妻になります。」
そして、目をつぶり、冷たいとかげの口に私の唇を重ねました。
僕はチクタクの修理屋。
チクタクを直すのは僕の仕事だからな。
それじゃあ…」
「あ、待って!」
小さく片手を上げ、その場を離れようとした修理屋さんをシュゼットが引き止めました。
「……なんだ?」
「何かお礼をさせて下さいな。」
「……さっきも言った通り、僕はチクタクを直すのが仕事なんだ。
お礼なんて……」
「遠慮なさらないで。
うちは幸いお金にはゆとりがあります。
ほしいものをなんなりとおっしゃって下さいな。」
にっこりと微笑むシュゼットとは裏腹に、修理屋さんは不機嫌な顔に変わりました。
「……そうか。君がそこまで言うのなら、お礼をいただくことにしよう。
どんなものでも良いんだな?」
「ええ。どうぞ。」
「それでは……僕の妻になってくれ。そして誓いの口付けをしてくれ。」
「えっ!」
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私も修理屋さんの言葉には酷く驚かされました。
「見ての通り、僕はこんな薄気味の悪いとかげだからね。
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「な、何を……」
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