鏡

３３

本当はもうどうでも良い気分だった。
 要するにごたごたしたことに立ち向かう気力が今の私にはなくて…
でも、それじゃあいけないという気持ちもどこかにあった私は、またその問題の解決を鏡の中の私に頼む事にした。
 面倒なことばかり押し付けていることに多少の後ろめたさは感じるものの、私と彼女は裏と表、元々は一つの存在…
そう言い聞かせて、私は彼女に全てを託す決心をした。



 「じゃあ……お願いするわ。」

 「ありがとう、優香！
 私、あなたのために全力を尽くすわ！」



 鏡の中の私は、リビングにある週刊誌を鏡に映る場所に置くように指示した。
それは、私が少しでも寂しい想いや退屈な想いをしないようにとの配慮からだった。
こういうちょっとした気遣いが心に染みる。

この間と同じように私と鏡の中の私は両手を合わせ、二人の居場所を入れ替わった。
 彼女にあるのは信頼感だけだったから、以前のような不安は少しも感じない。



 最初にここに来た時には、ここのひんやりとした空気が、なにか少し怖くて落ち付かないような気がしたけれど、不思議と今回はそれが心地良く感じられた。 



 「じゃあ、なるべく早く戻って来るから…待っててね！」

 「気をつけてね…」

 少しおかしな言葉だと思いながらも、私は鏡の中の私にそう声をかけて手を振った。