神在琉葵(かみありるき)

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 「えっ…私、そんなこと聞いてません。」

すべてが順調で…何一つ不安のなかったある日のこと。
 身に覚えのないミスで上司に呼び出された。。
 大きな問題ではなかったけれど、そういうことが何度か続いた。
もっと気を引き締めなくては…そう思っていた矢先、打ちこんでいた大切なデータがすべて消えていた。
その時、一番に頭に浮かんだのは麻美のこと。
だけど、ここの所は、本当に挨拶程度にしか接触がない。
ミスも何度かあったことだし、私はやはり少し気が緩んでいたか、疲れていたのかもしれない。
 仕事もジムもトシとのことも、全部全力でやっていたから。
 原因を探るよりも、まずは消えてしまったデータを元に戻すべく、毎日遅くまで会社に残り、パソコンに向かい続けた。
トシに会えないのは寂しかったけれど、せっかく手に入れかけた仕事での信頼感を失うわけにはいかなかった。
 幸い、トシも快く理解してくれたから、私は一心不乱に仕事に打ち込んだ。



 (やった…!
あと三日も残業したら、期日までには間に合いそうだわ。)



どうにか消えたデータを打ち直し、残りの目処も付いたある日、見知らぬメールアドレスからメールが届いた。
 迷惑メールかとも思ったけれど、それはよくある携帯会社からのドメインだから、誰かがメアドを変えたのかもしれない。
そう考えて、私はそのメールを開いた。
そこには文章はなにもなく、ただ、トシの横に添い寝する麻美の画像だけが添付されていた。
 麻美の顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。



 目の前が真っ暗になった。
 麻美のことは、最近は頭の片隅にもなかったから、その衝撃は自分でも意外な程大きくて…
私は仕事をする気にもなれず、そのまま家に戻った。
 悔しくて…悲しくて…
眠れない夜を過ごし、私は次の日の朝早く、会社を休んでおばあちゃんの家に向かった。
 一番信頼出来る人に、相談するために… 
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