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魔女、再び
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*
「この山だな!」
二日間を山の中で過ごし、ようやく俺達は魔女の住むとされる山にたどり着いた。
「この山のどこに魔女はいるんだ?」
「そこまでは知らない。
ただ、この山にいるとしか…」
「いいかげんな情報だな。」
ユリウスは不機嫌に顔をしかめた。
まったくもう苛々する。
せっかく俺が貴重な情報を仕入れて来てやったっていうのに、こいつと来たら感謝するどころか不満ばかり言いやがって…
「ま、探せばみつかるさ。
さ、行こう!」
アランも俺達の間でなにかと気を揉んでるようだ。
気を遣わせて申し訳ない。
しばらく山をうろうろしているうちに、俺達は立ち上る白い煙をみつけた。
「多分、あれだな!」
俺達は、煙の場所へ急いだ。
*
「あそこだ!」
山の中腹より少し高いところに、その家は建っていた。
あたりはいつの間にか、薄暗くなっていた。
「間違いない。
ここが魔女の家だろう。」
「そうだろうな。」
「大丈夫なのか?
魔女の家に行ったりして、ヒキガエルに変えられたりしないか?」
「心配なら、あんたはここで待ってな。」
「い、いや、俺も行く!
なんかあったら、俺があんたを守るから。」
アランは、そう言って大きく頷く。
まったく困ったもんだ。
俺はもうすぐ男に戻るっていうのに…
俺が男に戻ったら、アランの奴…一体、どんな顔をするだろう…?
俺達は、魔女の家に向かった。
「こんにちは。」
声をかけながら、俺は扉を叩いた。
「誰だい。」
しばらくして出てきたのは、サンドラ婆さんとよく似た感じの小柄な婆さんだった。
「初めまして。私たちは旅の者なのですが…」
「お前さんたち、私が誰だかわかってるのか?
魔女だよ。
あたしゃ、人間になんぞ何の用もない。」
けんもほろろに魔女は俺達の来訪を蹴り、扉を閉めようとした。
「ちょっと待って下さい。
あなたに、お土産があるんです。」
「……土産…だと?」
俺は、袋の中から酒の瓶を取り出した。
その途端、魔女の態度が変わった。
「そういうことは早くに言わんか。」
そう言いながら、魔女は素早く酒の瓶を受け取った。
酒場で聞いたんだ。
山の中に住む魔女はたいそうな酒好きで、町にもたまに酒を買いに来るのだと。
だから、こういう時のために酒を買っておいたというわけだ。
「この山だな!」
二日間を山の中で過ごし、ようやく俺達は魔女の住むとされる山にたどり着いた。
「この山のどこに魔女はいるんだ?」
「そこまでは知らない。
ただ、この山にいるとしか…」
「いいかげんな情報だな。」
ユリウスは不機嫌に顔をしかめた。
まったくもう苛々する。
せっかく俺が貴重な情報を仕入れて来てやったっていうのに、こいつと来たら感謝するどころか不満ばかり言いやがって…
「ま、探せばみつかるさ。
さ、行こう!」
アランも俺達の間でなにかと気を揉んでるようだ。
気を遣わせて申し訳ない。
しばらく山をうろうろしているうちに、俺達は立ち上る白い煙をみつけた。
「多分、あれだな!」
俺達は、煙の場所へ急いだ。
*
「あそこだ!」
山の中腹より少し高いところに、その家は建っていた。
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「間違いない。
ここが魔女の家だろう。」
「そうだろうな。」
「大丈夫なのか?
魔女の家に行ったりして、ヒキガエルに変えられたりしないか?」
「心配なら、あんたはここで待ってな。」
「い、いや、俺も行く!
なんかあったら、俺があんたを守るから。」
アランは、そう言って大きく頷く。
まったく困ったもんだ。
俺はもうすぐ男に戻るっていうのに…
俺が男に戻ったら、アランの奴…一体、どんな顔をするだろう…?
俺達は、魔女の家に向かった。
「こんにちは。」
声をかけながら、俺は扉を叩いた。
「誰だい。」
しばらくして出てきたのは、サンドラ婆さんとよく似た感じの小柄な婆さんだった。
「初めまして。私たちは旅の者なのですが…」
「お前さんたち、私が誰だかわかってるのか?
魔女だよ。
あたしゃ、人間になんぞ何の用もない。」
けんもほろろに魔女は俺達の来訪を蹴り、扉を閉めようとした。
「ちょっと待って下さい。
あなたに、お土産があるんです。」
「……土産…だと?」
俺は、袋の中から酒の瓶を取り出した。
その途端、魔女の態度が変わった。
「そういうことは早くに言わんか。」
そう言いながら、魔女は素早く酒の瓶を受け取った。
酒場で聞いたんだ。
山の中に住む魔女はたいそうな酒好きで、町にもたまに酒を買いに来るのだと。
だから、こういう時のために酒を買っておいたというわけだ。
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