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「信ちゃん、しっかりして!
信ちゃん…!」
けれど、そのまっすぐな瞳が開くことはなかった。
信ちゃんは、死んでしまった。
もう少し早ければ、助かったかもしれない命だった。
(私のせいだ……)
私が信ちゃんを呼び出したりしなければ…
話し合いの場所に連れて行かなければ、信ちゃんは死なずに済んだのに…
後悔してもしきれない。
信ちゃんのご両親に合わせる顔がない…
今すぐにでも、この世から消えてしまいたいような気分だった。
「俺は本当にツイてるな…」
背後から囁かれた声に、私の心臓は大きく跳ねた。
「あいつが死んだから、約束は反故だ。
離婚届けはさっき捨てた。」
そう言うと、夫は高笑いをした。
静かな病院の廊下に、狂ったような笑い声が反響する。
この時、私は生まれて初めて、人を殺したいと思った。
こんな奴…生きてる価値なんてない。
そこに、偶然、刃物があったなら、間違いなく私は夫を切りつけていたと思う。
でも、なかったことが夫の命を救い、私に罪を犯させなかった。
それが、良かったのか、良くなかったのか、私には良くわからない。
今回、夫の身代わりになったのは、宮川という若い男だった。
私の幼馴染である信ちゃんが訪ねて来たから、皆でちょっとしたパーティを開いたということになった。
信ちゃんが、今でも私に好意を持ち、そのせいで険悪な雰囲気になり、信ちゃんがナイフを持ち出して、夫に切りつけようとしたところを、宮川さんが割って入り、その時の揉み合いの際に、信ちゃんの腹に刺さったということになった。
とんだ茶番だ。
真相をぶちまけてやろうかとも思ったけれど、どうせなら、さらにそのことでゆすってやろうと黒い気持ちがわき上がって来た。
それが、信ちゃんの仇討ちになるような気がして…
信ちゃんは、きっと、そんなことはやめろと言ってくれただろうけど、私はこの恨みをこのままにしてはおけなかったのだ。
「信ちゃん、しっかりして!
信ちゃん…!」
けれど、そのまっすぐな瞳が開くことはなかった。
信ちゃんは、死んでしまった。
もう少し早ければ、助かったかもしれない命だった。
(私のせいだ……)
私が信ちゃんを呼び出したりしなければ…
話し合いの場所に連れて行かなければ、信ちゃんは死なずに済んだのに…
後悔してもしきれない。
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「俺は本当にツイてるな…」
背後から囁かれた声に、私の心臓は大きく跳ねた。
「あいつが死んだから、約束は反故だ。
離婚届けはさっき捨てた。」
そう言うと、夫は高笑いをした。
静かな病院の廊下に、狂ったような笑い声が反響する。
この時、私は生まれて初めて、人を殺したいと思った。
こんな奴…生きてる価値なんてない。
そこに、偶然、刃物があったなら、間違いなく私は夫を切りつけていたと思う。
でも、なかったことが夫の命を救い、私に罪を犯させなかった。
それが、良かったのか、良くなかったのか、私には良くわからない。
今回、夫の身代わりになったのは、宮川という若い男だった。
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