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「マリア、子供はたくさんほしいね。
 君は本当に子供が好きだもんね。
そのためにもやっぱり家は大きい方が良いよね。
うん、やっぱりあれじゃあ狭いね。
 東の庭のあたりに増築してもらおう!
 掃除はちょっと大変かもしれないけど、子供達の声が絶えない楽しい家庭に……」
 「ごめんなさい…」



 「え……?」

 僕の声に重なったか細い声に、僕の言葉は途切れた。



 「マリア…今、なんて…?」

 「ジュスト……私…もうだめだと思う……」

 「ば、ばか!なにを言ってるんだ!
 君はそんな弱虫じゃないだろ?
 君なら耐えられるよ!
 病気に勝てる!
 良いかい?君が苦しい時は、君の身体の悪い病気だって……」

 「ジュスト……もう…赦して……」



 赦す……?



 思いもかけなかった彼女のその言葉が僕の胸に深く突き刺さった。



 「どういうこと…?」
 言いかけたその言葉を僕は飲みこんだ。



 僕は……僕は、それほど彼女を苦しめていたのか?
 彼女は、生きたかったのではなく、もしかしたら僕のために頑張っていてくれたのか?
ただ、僕がそう望むから…



マリアは本当は辛くてもうやめたくて、もう楽になりたかったのに、僕は自我のために彼女に辛いことを強いて来たのか?



 彼女を失いたくないという自我だけのために……
僕は、誰よりも大切な彼女を救えないだけではなく痛め苦しめ続けていたというのか…!?



 (……なんてことを…)



 何もかもが足元からぐらぐらと崩れていくような気がした。



 「マリア…あ、あの……」

 「ジュスト……私……あなたに……うっ……うぅ……」

 僕が、マリアの気持ちを訊ねようとしたまさにその時、マリアが何かを言いかけて、その顔が苦痛に歪み、身体が急に強張って……



「マリア?……マリア……どうした?
マリア……マリア!
しっかりするんだ!しっかり!!」



 僕は、知りうる限りの救命処置を施した。
だけど、彼女の身体はまるで人形のようで……



僕には本当はわかっていたんだ。
 彼女がもう死んでしまっていることを…
けれど、そんなに呆気なく死んでしまったことが信じられなくて…
認めたくなくて…
きっと、今にも奇蹟が起きて、マリアは息を吹き返すんだって…そう信じて懸命に僕は……



だけど、奇蹟は起きなかった……

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