8 / 14
7
しおりを挟む
*
「ジュスト、本当に大丈夫なの?
あのお薬を飲むと、マリアはあんなに苦しそうに……」
「大丈夫です。
苦しんでいるのはマリアだけじゃないんです。
マリアの身体の中の悪い細胞は、彼女以上に苦しんでるんですよ。
あの薬が必ず効いてくれますから、もう少しの辛抱です。」
「でも、マリアが……」
マリアの母は、込み上げる感情に目頭の涙を押さえた。
「大丈夫です。
僕は医者ですよ。
信じて下さい。」
僕は、伝手を辿ってまだ研究段階の試薬を手に入れ、それをマリアに飲ませた。
それは酷い副作用を伴ない、マリアはたいそう苦しんだが、これを飲めばきっと良くなるという僕の言葉を信じ、彼女は懸命に耐えてくれた。
マリアも当然まだ死にたくはなかったのだろう。
だからこそ、あれほど辛い副作用にも耐えてくれたんだと思う。
僕は結婚式を三ヶ月後に決めた。
それは、医師の診立てからすれば無理な日程だったが、目標を持つ事で彼女の生命力が強化されると考えたからだった。
診療所の近くの空き家を買い、結婚式の頃に間に合うようにリフォームを頼み、僕は家の内装の進み具合を毎日彼女に話して聞かせた。
仕上がったドレスが届いたある日、マリアはそれを見て嬉しそうな笑顔を見せた。
採寸した時よりはずっと細くなった彼女の身体に、それが合わない事は一目でわかったが、誰もそんなことは口にしなかった。
「マリア、結婚式までもうすぐだね。
君のウェディングドレス姿…綺麗だろうなぁ…
ねぇ、ここでの式が終わったら、僕の故郷でもお披露目のパーティを開こうよ。
友達をたくさん呼んで…
きっと、友達の中じゃ僕が最初の既婚者だな。
君みたいに可愛い奥さんを連れて帰ったら、皆、やっかむだろうなぁ。」
無理をしているのは自分でもよくわかった。
愛想笑いを浮かべ、わざと楽しそうに大きな声で話して……
目の前にいるマリアは痩せこけ、土のような顔色に白い唇をしている。
僕はそんなことを言いながら、それがきっと現実になるんだと、ただ自分に言い聞かせ、辛い現実から目を背けていただけなのかもしれない。
マリアはそんな僕の話に小さく口角を上げて微笑んだ。
「ジュスト、本当に大丈夫なの?
あのお薬を飲むと、マリアはあんなに苦しそうに……」
「大丈夫です。
苦しんでいるのはマリアだけじゃないんです。
マリアの身体の中の悪い細胞は、彼女以上に苦しんでるんですよ。
あの薬が必ず効いてくれますから、もう少しの辛抱です。」
「でも、マリアが……」
マリアの母は、込み上げる感情に目頭の涙を押さえた。
「大丈夫です。
僕は医者ですよ。
信じて下さい。」
僕は、伝手を辿ってまだ研究段階の試薬を手に入れ、それをマリアに飲ませた。
それは酷い副作用を伴ない、マリアはたいそう苦しんだが、これを飲めばきっと良くなるという僕の言葉を信じ、彼女は懸命に耐えてくれた。
マリアも当然まだ死にたくはなかったのだろう。
だからこそ、あれほど辛い副作用にも耐えてくれたんだと思う。
僕は結婚式を三ヶ月後に決めた。
それは、医師の診立てからすれば無理な日程だったが、目標を持つ事で彼女の生命力が強化されると考えたからだった。
診療所の近くの空き家を買い、結婚式の頃に間に合うようにリフォームを頼み、僕は家の内装の進み具合を毎日彼女に話して聞かせた。
仕上がったドレスが届いたある日、マリアはそれを見て嬉しそうな笑顔を見せた。
採寸した時よりはずっと細くなった彼女の身体に、それが合わない事は一目でわかったが、誰もそんなことは口にしなかった。
「マリア、結婚式までもうすぐだね。
君のウェディングドレス姿…綺麗だろうなぁ…
ねぇ、ここでの式が終わったら、僕の故郷でもお披露目のパーティを開こうよ。
友達をたくさん呼んで…
きっと、友達の中じゃ僕が最初の既婚者だな。
君みたいに可愛い奥さんを連れて帰ったら、皆、やっかむだろうなぁ。」
無理をしているのは自分でもよくわかった。
愛想笑いを浮かべ、わざと楽しそうに大きな声で話して……
目の前にいるマリアは痩せこけ、土のような顔色に白い唇をしている。
僕はそんなことを言いながら、それがきっと現実になるんだと、ただ自分に言い聞かせ、辛い現実から目を背けていただけなのかもしれない。
マリアはそんな僕の話に小さく口角を上げて微笑んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
好きになっちゃったね。
青宮あんず
大衆娯楽
ドラッグストアで働く女の子と、よくおむつを買いに来るオシャレなお姉さんの百合小説。
一ノ瀬水葉
おねしょ癖がある。
おむつを買うのが恥ずかしかったが、京華の対応が優しくて買いやすかったので京華がレジにいる時にしか買わなくなった。
ピアスがたくさんついていたり、目付きが悪く近寄りがたそうだが実際は優しく小心者。かなりネガティブ。
羽月京華
おむつが好き。特に履いてる可愛い人を見るのが。
おむつを買う人が眺めたくてドラッグストアで働き始めた。
見た目は優しげで純粋そうだが中身は変態。
私が百合を書くのはこれで最初で最後になります。
自分のpixivから少しですが加筆して再掲。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
怪異・おもらししないと出られない部屋
紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。
ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。
こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。
強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる