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マリアは、明るく誰にでも優しい気立ての良い娘で…
しかも、頭の回転が速く、気の利く女性だった。
 父親の往診を口実に、僕は毎日彼女の家を訪れた。
 知れば知る程、彼女に心を奪われていった。
これほど好きになった人は今までいなかった。
 彼女の顔を見るだけで胸がときめき、今まで灰色に見えていた田舎での暮らしが急に鮮やかな色に変わっていくのを僕は感じた。
やがて、父親の怪我が治っても、僕は彼女の家によく遊びに出掛けた。
すでに顔なじみとなった彼女の両親は、僕を家族の一員のように扱ってくれた。
 今にして思えば、僕がマリアに好意を抱いている事を、二人はとっくに気付いていたのだろう。
 当然、僕の恋心は彼女にも伝わってしまい、その頃には幸いに、彼女も僕に同じような気持ちを抱いてくれていた。
それがわかると僕はもう自分の気持ちを押さえることが出来なくなり、ある時、彼女に真剣に僕の気持ちを打ち明けた。



 「マリア…
僕は君を愛している。
 僕と結婚してくれないか?」

 「ジュスト…私もあなたを愛してる。
でも……あなたは、もうじきこの村を去ってしまう。
 私は、この村を離れることなんて出来ない…だから……」

 「マリア…誰がこの村を去るんだって?
 僕はどこにも行かないよ。
ここでずっとこの村の人達の健康を守って行く。」

 「ほ…本当なの!?」



それは、口からでまかせを言ったわけじゃなかった。
 僕は、彼女と知り合ってから何度も葛藤を繰り返しながらも、最終的には彼女への愛情が勝った。
 彼女のためなら退屈な田舎暮らしも厭わないという覚悟が決まったのだ。



 僕はそのことも正直に話した。
 彼女はいたく感動してくれて……もちろん、返事はイエス。
 僕はその返事に天にも上る心地だった。



それからは毎日がさらに楽しいものとなった。
 自然にこぼれる笑顔のせいなのか、どこからか僕がマリアと結婚してずっとここで暮らすことを聞きつけたのか、村の人達の態度も変わった。
 今までどこかよそよそしいものだった態度が、急に親近感を感じるものに変わっていった。

 毎日食べきれない程の作物をもらい、近所のご婦人が焼きたてのパイを持って来てくれることもあった。
そんなことが続き、ようやく僕もこの村の住人として認められたんだと感じ、気がつけば僕の心からも垣根のようなものはすっかりなくなっていた。


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