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 「う……うぅん……」

 「気がついた!?」

 「……あなたは……ここは……あ!リタ!」

ゆっくりと頭を巡らせた幼い少年は、隣のベッドで眠る少女をみつけて声を上げた。
 少年にとてもよく似た顔をした少女は、深い眠りに落ちたまままだ目を覚ます気配がない。



 「……大丈夫だよ。
 心配ない。
すぐにその子も目を覚ますからね。」

 僕がそう言うと、少年はゆっくりと僕の方に顔を向け……そのままじっとみつめた。



 「……もしかして……神様?」

 「え………」

 心臓が跳ねあがるような気がした。
 違うことはわかっている。
だけど、その言葉は、まるで僕のことを見透かしているようで……



「……違うよ。
 僕はただの人間だ。
そう……ただの医者だよ。」

 「じゃあ、僕達また……」

 少年はそう言うと唇を噛み締め、その青い瞳からは丸い涙がぽろぽろと溢れ出した。
しっかりとシーツを掴んだその手は、小刻みに震えている。
 彼が何を恐れているのかは、想像するに難くない。

それを見た時、僕の心に残っていたほんの少しの迷いは消えた。



 「そうじゃない…
もう、あそこへは戻らないんだよ。
あれは、全部夢だったんだ。
ずいぶんと怖い夢だったけど……もう大丈夫だ。
 君はもうあの夢から解放された。
これからは怖いことなんて何もない。
リタだって、すぐにそうなるよ…」

 「…………ゆめ…?」



 少年が、僕を見上げた。
 潤んだ青い瞳をまっすぐに向けて…


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