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 「ディラン!ミリアムに手紙を書いて!」

 「ミリアムに…?
そんなもの、書いてどうするっていうんだい?」

 「良いから、お金や改良した種の隠し場所や、ミリアムへの想いを真剣に書いてちょうだい。」

ディランは、アリシアに急き立てられ、ミリアムへの手紙を書きました。



 「アリシア…そんなもの、どうするつもりなんだい?」

 「ミリアムに届けて来るわ。」

 「馬鹿な…そんなこと、出来るはずがない。」

アリシアは、何も答えず、ディランに向かってにっこりと微笑みました。



 次の日の朝、まだディランが眠ったのを確認したアリシアは、家を抜け出し、村はずれのセリーヌの逆滝を探しに行きました。



 (あ、きっとあれだわ!)



 深い緑色の水を湛えた滝壺は元の世界とそっくり同じですが、滝の水は下から上に逆流していました。



アリシアは、その不思議な光景に一瞬息を飲みました。



 (あ、早く行かなきゃ!)



 手紙をしっかりと胸に抱いたアリシアは、迷うことなく滝壺に飛び込みました。
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