地下の初恋

神在琉葵(かみありるき)

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鏡の中と外

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 「アラステア!」

 「スコット…まだいたのか……」

 「さっきも言っただろう?
まだ話は終わってない。」

アラステアは、曖昧な笑みを浮かべて俯いた。



 「スコット…暫くここには来ないでほしい。」

 「なぜだ?僕と話すのがいやなのか?」

 「そうじゃないよ。
 信用なんて出来ないかもしれないけど…あと一度だけ僕を信じてほしい。」

 「何をするつもりだ?」

 「それは言えないけど…でも、馬鹿な真似は絶対にしない。
 少しの間だけ、僕の好きにさせてほしい。
どうか、お願いだ。」

スコットはすぐには返事が出来なかった。
アラステアが何事かを決意していることはわかるものの、それが何かはわからない。
そのことがスコットの胸を不安にさせた。



 「スコット…僕のことが信じられない?」

 「……そういうわけじゃない。
ただ、僕は……」

 「お願いだ。
これ以上のわがままは言わない。
だから、今回だけ僕を信じて…」

 真っ直ぐに見つめるアラステアの強い眼差しに、スコットは否定する事を諦めた。



 「わかったよ。
……でも、絶対に無茶な真似はしないと、今一度、誓ってくれ。」

 「無茶なことは絶対にしない。」

アラステアの真摯な態度に、スコットは渋々ながらも頷いた。




 「わかった。信じるよ。
 明日からしばらくは、ここに来ない。
だから…もう少し詳しく教えてくれ。
 今の君が置かれてる状況について…」

 「あぁ……良いよ。」

アラステアは、淀みなく話し始めた。
 鏡の中の世界のこと、レオナールのこと…知り得る限りの情報を包み隠さず、スコットに話して聞かせた。



 「本当に大丈夫なのか?
そいつは君に酷い事をしたりはしないのか?」

 「大丈夫だよ。
 最初は酷く感じの悪い奴だと思ったけど、意外と良い奴さ。
……彼も寂しいんだと思うよ、きっと。」

 「何を言っているんだ。
そいつは魔物なんだぞ。」

 「……魔物だって人間だって寂しさに変わりなんてないさ。」

 「でも……」

 「さぁ、そろそろ戻ってくれ。
 親戚達の事、よろしく頼んだよ。」

そう言うとアラステアは片手を振り、部屋を出て行った。
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