45 / 50
鏡の中と外
18
しおりを挟む
「アラステア、諦めちゃいけない!
なんとか考えるんだ。
こっちの世界に戻れる方法がきっとあるはずだ。」
「……それは無理だ。
さっきも言った通り、僕はレオナールが全力で鏡にぶつかるのを見た。
何度体当たりしようと、鏡はびくともしない。」
「だけど、君はそっちに行けたんだ。
それなら、出てくることだってきっと……」
「……入るのは簡単でも、一度入ったら出られない罠に迷い込んでしまったような気がするよ。
フィリスという餌につられてね…」
アラステアは自嘲めいた笑みを浮かべた。
「アラステア!!
君は今ここがどうなってるのか、わかってるのか?
君のこの屋敷や財産を自分のものにしようと、大勢の人が集まってる。
誰が、相続することになるのかはわからないけど、そうなれば、僕はこんな風に気楽にここに来られることは出来なくなるかもしれない。
それに、その誰かが鏡を売り払ったり、壊してしまったら、君はどうなるんだ?」
「……さぁ……」
「さぁ?真面目に考えろよ!
アラステア…それじゃあ、僕はどうなるんだ?
鏡が売りに出されても、僕にはこんな高い鏡は買い戻せない。
僕は鏡の中に君がいることを知っていながら何も出来ず、誰かにそのことを話すことすら出来ず……
そんな僕の気持ちはどうなる!!」
止まらない涙に唇を噛みしめ、激しい憤りに身を震わせるスコットに、アラステアは言葉を失った。
「アラステア…何とか言えよ!」
「……僕のことなんか忘れてくれれば良い。」
絞り出すような小さな声で、アラステアは呟いた。
「君は……君はそんな風に考えていたのか……
そんなことが出来るくらいなら、僕はこんなに苦しまないさ!」
スコットは激しい剣幕で壁を叩き、俯いていたアラステアは何も言わず突然立ち上がった。
「アラステア…?」
アラステアは何も言わず、スコットに背を向けた。
「アラステア、どこに行くんだ?
話はまだ終わってない…!」
スコットの声にも振り返ることなく、アラステアは扉に向かって歩き続ける。
「アラステアーー!」
血を吐くようなスコットの絶叫が、広い地下室に虚しく響き渡った。
なんとか考えるんだ。
こっちの世界に戻れる方法がきっとあるはずだ。」
「……それは無理だ。
さっきも言った通り、僕はレオナールが全力で鏡にぶつかるのを見た。
何度体当たりしようと、鏡はびくともしない。」
「だけど、君はそっちに行けたんだ。
それなら、出てくることだってきっと……」
「……入るのは簡単でも、一度入ったら出られない罠に迷い込んでしまったような気がするよ。
フィリスという餌につられてね…」
アラステアは自嘲めいた笑みを浮かべた。
「アラステア!!
君は今ここがどうなってるのか、わかってるのか?
君のこの屋敷や財産を自分のものにしようと、大勢の人が集まってる。
誰が、相続することになるのかはわからないけど、そうなれば、僕はこんな風に気楽にここに来られることは出来なくなるかもしれない。
それに、その誰かが鏡を売り払ったり、壊してしまったら、君はどうなるんだ?」
「……さぁ……」
「さぁ?真面目に考えろよ!
アラステア…それじゃあ、僕はどうなるんだ?
鏡が売りに出されても、僕にはこんな高い鏡は買い戻せない。
僕は鏡の中に君がいることを知っていながら何も出来ず、誰かにそのことを話すことすら出来ず……
そんな僕の気持ちはどうなる!!」
止まらない涙に唇を噛みしめ、激しい憤りに身を震わせるスコットに、アラステアは言葉を失った。
「アラステア…何とか言えよ!」
「……僕のことなんか忘れてくれれば良い。」
絞り出すような小さな声で、アラステアは呟いた。
「君は……君はそんな風に考えていたのか……
そんなことが出来るくらいなら、僕はこんなに苦しまないさ!」
スコットは激しい剣幕で壁を叩き、俯いていたアラステアは何も言わず突然立ち上がった。
「アラステア…?」
アラステアは何も言わず、スコットに背を向けた。
「アラステア、どこに行くんだ?
話はまだ終わってない…!」
スコットの声にも振り返ることなく、アラステアは扉に向かって歩き続ける。
「アラステアーー!」
血を吐くようなスコットの絶叫が、広い地下室に虚しく響き渡った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
地下の初恋
神在琉葵(かみありるき)
ファンタジー
ユリクスさんとの企画ものです。
恋愛とホラー要素、そして「カレーライス」というものをミックスして、10ページという決まりで、書いてみました。
表紙画はハチムラリン様に描いていただきました。m(__)m
Go to the Frontier(new)
鼓太朗
ファンタジー
「Go to the Frontier」改訂版
運命の渦に導かれて、さぁ行こう。
神秘の世界へ♪
第一章~ アラベスク王国編
第三章~ ラプラドル島編
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる