地下の初恋

side アラステア

５

「そう……
でも、結婚だけがすべてじゃないからね。
僕だってまだ独身だし、そう急ぐことはないさ。」



スコットはどんな想像をしたんだろう？
結婚だけがすべてじゃない……？
そんなことを言うからには、きっと、僕の好きになった人は僕と結婚出来ない立場の人間だと想像したんだろう。
例えば、うちの使用人……または、すでに夫がいる身の女性……そんな所だろうか。




君はすごく感が良いけれど、生真面目だからきっと本当のことには思いあたらないだろうね。



はっきり言った方が良いんだろうか？
でも、話したところで、きっと彼には理解出来ないだろう。



話さないのなら、こんな所まで彼を呼び出した意味がない。
それ以前に、僕は彼女のことを話したくてたまらないんだ。



だけど……



「ねぇ、アラステア……
その人は……」

「ごめん……僕、なんだか疲れたみたいだ。
このところは、調子が良かったんだけどね。」

「あ…あぁ、それはいけない。
夕食まで少し横になったらどうだい？」

「ありがとう。
そうさせてもらうよ。」



僕はスコットから逃げた。
気持ちが混乱して、本当に気分が悪くなったんだ。

決められない自分の心に酷く腹が立って……
そんなことくらいでダメージを受けてしまう自分の身体がふがいなくて、なんだかいっぺんに気分が滅入ってしまった。