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「国王!
このままでは、あと一週間もしないうちに城下町にも水が到達してしまうと思われます」
「なんと、もうそんなに……!」
ここは、ローランド王国の地下深くにある地底都市フォモールです。
広く大きな空洞の中に、この国はありました。
壁や天井には、ヒカリゴケがびっしりと植えられています。
この苔はとても珍しいもので、この世界にしかありません。
一日の半分の時間明るく発光し、もう半分は発光を止めるのです。
他にも地上にはない植物がいろいろとありましたが、ここで暮らす人々は、地上で暮らす人達とほとんど差異はありません。
動物も地上にいる者たちと同じようなものばかりです。
平和なこの国に、異変が起こり始めたのは少し前のことでした。
この世界にあるメイラー湖の水位がなぜだか増えて行ったのです。
湖から溢れた水はどんどん広がり、フォモール城に届くのも時間の問題とされています。
「決断すべき時が来たということだな。」
フォモールの国王はそう言って、深く頷きました。
「陛下、まだ水はここには届いておりません。
もう少し良くお考えになった方が…」
「アーサー、今、この者が言ったことを聞いてなかったとでも言うのか?
あと一週間もしないうちに、町に水が押し寄せて来ると言ったのだぞ。」
「しかし、確かにそうなると決まったわけではありません。
もしかしたら、このまま穏やかに水が引くかもしれませんし…」
「アーサー様、そんなことはございません!
湖の水位は一定の分量で増え続けておるのです。
私達は昔からずっとメイラー湖のことを観察続けて参りました。
その結果に基いた予想がはずれるはずがございません。」
学者に返す言葉がみつからず、アーサーはぎゅっと唇を噛み締めました。
アーサーは、何も学者の言うことを信じていないというわけではありませんでした。
アーサーには別の心配があったのです。
それは、国王のことです。
国王は、穏やかなアーサーとは違い、野心家で好戦的な人でした。
昔から地上に強い関心を抱いており、この異変を機に国を捨て、ローランドの領地を奪って、地上で暮らしたいと考えていたのです。
「国王!
このままでは、あと一週間もしないうちに城下町にも水が到達してしまうと思われます」
「なんと、もうそんなに……!」
ここは、ローランド王国の地下深くにある地底都市フォモールです。
広く大きな空洞の中に、この国はありました。
壁や天井には、ヒカリゴケがびっしりと植えられています。
この苔はとても珍しいもので、この世界にしかありません。
一日の半分の時間明るく発光し、もう半分は発光を止めるのです。
他にも地上にはない植物がいろいろとありましたが、ここで暮らす人々は、地上で暮らす人達とほとんど差異はありません。
動物も地上にいる者たちと同じようなものばかりです。
平和なこの国に、異変が起こり始めたのは少し前のことでした。
この世界にあるメイラー湖の水位がなぜだか増えて行ったのです。
湖から溢れた水はどんどん広がり、フォモール城に届くのも時間の問題とされています。
「決断すべき時が来たということだな。」
フォモールの国王はそう言って、深く頷きました。
「陛下、まだ水はここには届いておりません。
もう少し良くお考えになった方が…」
「アーサー、今、この者が言ったことを聞いてなかったとでも言うのか?
あと一週間もしないうちに、町に水が押し寄せて来ると言ったのだぞ。」
「しかし、確かにそうなると決まったわけではありません。
もしかしたら、このまま穏やかに水が引くかもしれませんし…」
「アーサー様、そんなことはございません!
湖の水位は一定の分量で増え続けておるのです。
私達は昔からずっとメイラー湖のことを観察続けて参りました。
その結果に基いた予想がはずれるはずがございません。」
学者に返す言葉がみつからず、アーサーはぎゅっと唇を噛み締めました。
アーサーは、何も学者の言うことを信じていないというわけではありませんでした。
アーサーには別の心配があったのです。
それは、国王のことです。
国王は、穏やかなアーサーとは違い、野心家で好戦的な人でした。
昔から地上に強い関心を抱いており、この異変を機に国を捨て、ローランドの領地を奪って、地上で暮らしたいと考えていたのです。
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