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「ニコール……」



ニコールの亡骸は、本人の遺志により、彼が生まれたあの木のあった場所に埋葬されました。
あの木は、ニコールが生まれるとみるみるうちに生気を失い、半月も経たないうちに枯れてしまい、今では何の痕跡もありません。
 二人は毎日そこを訪ね、美しい花を手向けます。
ニコールのことを思い出しては涙が溢れ、二人は、ニコールがどれほど大切な存在だったかを改めて感じるのでした。



「ニコール…こんなに早く逝ってしまうのなら、もっといろんなことをしてあげたかった……」

「マリオン…その話はもうしないって決めただろ?」

「ごめんなさい……でも……」



二人はなかなか悲しみから立ち直ることが出来ませんでした。
毎日、ニコールのことを想っては、止まらない涙を流します。
そんなある日のこと……



「あら…?」

マリオンは、いつものようにニコールに花を手向ける時に、雑草の中に混じった小さな芽をみつけました。



「マリオン、どうかしたのかい?」

「いえ…なんでもないわ。」



妙に気をひかれましたが、それでもアベルに話す程だとは思えず、マリオンは言葉を濁しました。
ところが、それから数日が経った時、マリオンは大きな声を上げました。




「アベル!これを見て!」

「……これがどうかしたのかい?」

「アベル…思い出して!
ここに種を植えた時、これと同じような芽が出なかった?」

「え…確かにそうだけど、こんなのどこにでもある芽じゃないか。」

「え……そ、そういえば…そうね。」



マリオンは、少し寂しそうな表情で、小さく頷きました。

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