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「……なんだろう、これ……」

「きっと、赤ちゃんが入る袋よ!」

「えっ!?」



ある日のこと、赤ん坊のなる木には、小さな袋のようなものがぶらさがっていたのです。
それは、いちごがひとつ入るくらいの小さなもので皮はけっこう厚みがあり、中には水のようなものが入っているようで少し膨らんでいました。



「そ、そうかなぁ…
あの本にはそんなことは書いてなかったと思うけど……」

本には、種を植えた後は愛情を込めて毎日水をかけるようにとだけ書いてありました。



「書いてあったわよ。
種を植えて180日程経った満月の夜0時、袋が脈動してるのを確かめて……」

「ちょっと待ってよ。
僕もあの本は読んだけど、そんなことは書いてなかったよ。」

「あなた、ちゃんと読んでないのよ。
もう一度見てみたらわかるわ。」



アベルは不審に感じながらも、家に戻ってからすぐに例の本を開きました。
マリオンの言った通り、そこには木のことが詳しく書いてありました。



(おかしいな…確か、最後のページまでちゃんと読んだはずなのに……)



そう思いながらも、アベルは今度こそきっちりと最後のページまで目を通しました。



「ね?ここに書いてあるでしょう?
種を植えて180日程経った満月の夜0時、袋が脈動してるのを確かめて、二人で呪文を唱えるって。
でも、おかしなことにその呪文が書いてないのよ。」

「本当だ。おかしいね。
書いてないんじゃ、何を唱えれば良いのかわからないじゃないか。」

「困ったわね。」

二人は本を見つめたまま、小さな溜息を吐きました。
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