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「ずいぶんと大きくなったわね!」

「そうだね。」



種を植えて数日後、小さな双葉の芽が土の中から顔を出しました。
それは、ひまわりに似た、これといって特徴のないありきたりな植物の芽でした。
アベルは、芽が出たことで多少困惑していました。
種を作るまでは、自分でも意外な程夢中になっていましたが、いざ種が出来て冷静になってみると、そんなものから芽が出るとは到底思えなかったのです。
なんせ、種の材料に使ったものは、芽が出る要素のないものばかりです。
 植物も混じってはいましたが、からからに干からびたものを刻んだりしたのです。
そんなものから芽が出るとは思えません。
ですから、アベルはなんといってマリオンを慰めようかと頭を悩ませていたのです。
それなのに、種を植えた場所からは芽が出て、やがてそれはすくすくと順調過ぎる程成長し、あっという間に、アベルの背を越える高さになっていました。
長年、畑仕事をしているアベルも、これほど成長の早い植物は知りませんでした。
最初は、たまたま植えた種のそばに、鳥かなにかが種を落としたんじゃないかと考えていたアベルも、その木の成長を見ると、そうではないような気がしてきました。



「ねぇ、アベル…生まれて来るのは、女の子かしら?それとも男の子かしら?」

「さ、さぁ、どうだろうね。」

「生まれたら、早速名前をつけなきゃいけないわね。
どんな名前が良いかしら?
ねぇ、あなたも一緒に考えて!」

アベルとは違い、マリオンは赤ん坊が生まれて来ることを少しも疑っていませんでした。
毎日その木を見に行っては水をまき、家では小さな靴下を編んだりしながら、赤ん坊が生まれるのを楽しみに待っていました。



そんなある日のこと、赤ん坊のなる木に二人は異変をみつけました。
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