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「おばあさん、本はおいくらなんですか?」

「あんたらは今日最初のお客だから、特別に安くしとくよ。」

そう言って提示された額は、りんご一かご分程の金額でした。



二人は再び顔を見合わせ頷きました。
そのくらいなら、どれでもいいから買って早くにこの店を出よう。
そう考えて、二人はおばあさんの目の前に戻りました。



「さぁ、必要なものをお選び。」



表紙には様々なタイトルが書いてありました。
「好きな人の心をつかむ方法」「失せ物を探し出す方法」「金持ちになる方法」「人を呪い殺す方法」
タイトルを目で追ううちにマリオンとアベルは同時に短い声を上げ、一冊の本に手を伸ばしました。
それは「赤ん坊を作る方法」と書かれた本でした。



「それにするのかい?」

「え…は、はい。」

「そうかい。
それじゃあ、お代を……」

差し出された手の平に、アベルは代金を載せました。



「ありがとうよ。これでその本はあんたのもんだ。
いいかい?帰ったら、まず本の表紙に息をふきかけるんじゃ。」

「は、はい…わかりました。では……」

アベルは本をかばんに入れ、マリオンと共にそそくさとその場を後にしました。
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