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回想

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「……そうですか……で、では、ここはいつからこんなことになったんですか?」

 「……もうはっきりとは覚えていませんが、ずいぶん昔のことだったと思います。
ある時、信じられないような激しい風が吹きました。
 桜の花びらが風に舞い、村全体を覆い尽すような…それは今までに経験したことのないような酷い風でした。
ですが、その時はまだ僕達は何もわかっていなかった。
 風はしばらくするとやみましたし、大きな異変が起きていることにはなかなか気付かなかったのです。
 風が吹いた日から数日経った頃、ある老人がおかしなことを言いました。
 隣村に行けない…と。
 僕達は、その老人の頭が少しおかしくなったのかと思っていました。
ところがそうではなかった。
その老人の言ったことは本当だったのです。
みんなが試してみました。
いろいろな方法で…
しかし、誰もこの村を出ることは出来なかった…」

 「そんな……」

 「そして、村のすべてが時を刻まなくなりました。
ただ、朝から晩の時間だけは進みます。
つまり、同じ一日を何度も繰り返すような感じです。
それだけではありません。私達は何年経っても年を取らなくなったのです。
それに、風邪や腹痛などのちょっとした病気はしますが、死ぬような病気はしなくなったのです。」

 「そ、それじゃあ…ここにいる人達は、皆、不老不死だと…?」

 男性は表情を変えることなく、ただ、ゆっくりと頷いた。
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