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(れ)レストラン
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「いらっしゃいませ。」
低い声と優しい微笑み。
僕はあのおじさんの笑顔を今でもはっきりと覚えている。
僕が子供の頃、僕の家はとても貧しかった。
我慢ばかりの辛い毎日だったけど、誕生日だけは楽しい事があった。
近くのレストランに連れて行ってもらえたんだ。
そこで食べるハンバーグは頬っぺたが落ちそうなくらい美味しかった。
その時だけは幸せを感じられた。
そして、僕は、将来、こんなレストランを作りたいと思った。
味はもちろん、人を幸せにするレストランを。
高校を出た僕は、あるレストランに就職した。
修行はとても厳しかったけど、ひたすら真面目に働いて、料理を覚えた。
それから、二十年…
僕は、念願だった自分の店を持った。
何が良かったのかわからないけど、店は僕が思ってたよりもずっと繁盛し、テレビにも何度も取材され、数年後には、店は五軒に増えていた。
気が付けば、僕はカリスマシェフと呼ばれるようになっていて、僕の店は近所の人が気軽に来られるような店ではなくなっていた。
予約をして、スーツやドレスを着て来るような店になっていたのだ。
両親に家を建て、僕も立派なタワーマンションに住んでいる。
満ち足りているはずのそんな生活が、僕にはとても味気なく感じられた。
(僕の作りたかったのはこんな店じゃない…)
料理を作る事が苦痛に思えた。
そんなある日、思いがけない人が店を訪れた。
昔、誕生日に連れて行ってもらっていたレストランのおじさんだ。
今はすっかりおじいさんになられていたけど、優しい笑顔ですぐにわかった。
「ご来店、ありがとうございます。」
「こちらこそ、どうもありがとうございます。
どの料理もとても美味しかったです。」
「そんな…僕は、本当はあなたのようなレストランを作りたかったのに…僕はあなたのお店のお陰で年に一度、幸せになれました。」
「私もですよ。予約をした日から今日までずっとわくわくして、今日はその期待以上でした。
一生の思い出になりました。」
変わらない笑顔に、僕はとても勇気付けられた。
低い声と優しい微笑み。
僕はあのおじさんの笑顔を今でもはっきりと覚えている。
僕が子供の頃、僕の家はとても貧しかった。
我慢ばかりの辛い毎日だったけど、誕生日だけは楽しい事があった。
近くのレストランに連れて行ってもらえたんだ。
そこで食べるハンバーグは頬っぺたが落ちそうなくらい美味しかった。
その時だけは幸せを感じられた。
そして、僕は、将来、こんなレストランを作りたいと思った。
味はもちろん、人を幸せにするレストランを。
高校を出た僕は、あるレストランに就職した。
修行はとても厳しかったけど、ひたすら真面目に働いて、料理を覚えた。
それから、二十年…
僕は、念願だった自分の店を持った。
何が良かったのかわからないけど、店は僕が思ってたよりもずっと繁盛し、テレビにも何度も取材され、数年後には、店は五軒に増えていた。
気が付けば、僕はカリスマシェフと呼ばれるようになっていて、僕の店は近所の人が気軽に来られるような店ではなくなっていた。
予約をして、スーツやドレスを着て来るような店になっていたのだ。
両親に家を建て、僕も立派なタワーマンションに住んでいる。
満ち足りているはずのそんな生活が、僕にはとても味気なく感じられた。
(僕の作りたかったのはこんな店じゃない…)
料理を作る事が苦痛に思えた。
そんなある日、思いがけない人が店を訪れた。
昔、誕生日に連れて行ってもらっていたレストランのおじさんだ。
今はすっかりおじいさんになられていたけど、優しい笑顔ですぐにわかった。
「ご来店、ありがとうございます。」
「こちらこそ、どうもありがとうございます。
どの料理もとても美味しかったです。」
「そんな…僕は、本当はあなたのようなレストランを作りたかったのに…僕はあなたのお店のお陰で年に一度、幸せになれました。」
「私もですよ。予約をした日から今日までずっとわくわくして、今日はその期待以上でした。
一生の思い出になりました。」
変わらない笑顔に、僕はとても勇気付けられた。
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