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(き)きつね色
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(うわぁ…炭だ…)
どうしてだろう?
本に書いてあった通りにしたはずなのに、出来上がりはまるで違う。
(やっぱり、無理ってことなのかな…?)
先輩はお菓子の中ではクッキーが一番好きだって聞いた。
だから、バレンタインデーにはチョコレートじゃなくて、クッキーをあげようと思い付いた。
だけど、簡単なはずのクッキーが私にはうまく出来ない。
真っ黒になったクッキーを見ていると、私の恋の行方を見ているような気がした。
真っ黒なクッキーに手を伸ばす…
(にが……)
やっぱり…
私の恋がうまくいくはずがない。
先輩は、頭が良くて格好良くて、その上、面白くて優しくて…
そんな完璧な人だから、みんなが先輩のことを好きになる。
でも、先輩の彼女さんになれるのはたったひとりだけ。
私がもっと可愛いとか頭が良いとか、お金持ちだとか…なにかひとつでも誰よりも優れたところがあればともかく、私はすべてにおいてごくごく平均的。
そんな私が、先輩に選んでもらえるはずがない。
そんなことはわかってるのに、先輩を好きな気持ちは止められない。
すっぱり諦めることが出来ない。
万が一にも可能性があるのなら…なんとか頑張ってみたいなんて思ってしまって…
(馬鹿だな、私……)
苦いクッキーをもう一つ、口に運んだ。
(うん、これは絶対にだめ!
ようし、また作り直すか!)
私は再び、クッキー作りに取り組んだ。
材料をきっちりと計って生地をこね、型を抜いてオーブン皿に並べていく。
先輩がにこにこしながらクッキーを食べる様子が目に浮かぶ。
そうだよね…それだけで十分。
先輩に喜んで食べてもらえたら、それだけで…
今度は、焼き時間を本に書いてあるより少し短めにした。
しばらくして、チン!と軽やかな音が鳴って…
「わぁ…」
クッキーは、綺麗なきつね色に焼きあがっていた。
甘くて香ばしいにおいが鼻をくすぐる。
(……おいしい!)
クッキーは成功した。
告白は成功するかどうかはわからないけど…
どうしてだろう?
本に書いてあった通りにしたはずなのに、出来上がりはまるで違う。
(やっぱり、無理ってことなのかな…?)
先輩はお菓子の中ではクッキーが一番好きだって聞いた。
だから、バレンタインデーにはチョコレートじゃなくて、クッキーをあげようと思い付いた。
だけど、簡単なはずのクッキーが私にはうまく出来ない。
真っ黒になったクッキーを見ていると、私の恋の行方を見ているような気がした。
真っ黒なクッキーに手を伸ばす…
(にが……)
やっぱり…
私の恋がうまくいくはずがない。
先輩は、頭が良くて格好良くて、その上、面白くて優しくて…
そんな完璧な人だから、みんなが先輩のことを好きになる。
でも、先輩の彼女さんになれるのはたったひとりだけ。
私がもっと可愛いとか頭が良いとか、お金持ちだとか…なにかひとつでも誰よりも優れたところがあればともかく、私はすべてにおいてごくごく平均的。
そんな私が、先輩に選んでもらえるはずがない。
そんなことはわかってるのに、先輩を好きな気持ちは止められない。
すっぱり諦めることが出来ない。
万が一にも可能性があるのなら…なんとか頑張ってみたいなんて思ってしまって…
(馬鹿だな、私……)
苦いクッキーをもう一つ、口に運んだ。
(うん、これは絶対にだめ!
ようし、また作り直すか!)
私は再び、クッキー作りに取り組んだ。
材料をきっちりと計って生地をこね、型を抜いてオーブン皿に並べていく。
先輩がにこにこしながらクッキーを食べる様子が目に浮かぶ。
そうだよね…それだけで十分。
先輩に喜んで食べてもらえたら、それだけで…
今度は、焼き時間を本に書いてあるより少し短めにした。
しばらくして、チン!と軽やかな音が鳴って…
「わぁ…」
クッキーは、綺麗なきつね色に焼きあがっていた。
甘くて香ばしいにおいが鼻をくすぐる。
(……おいしい!)
クッキーは成功した。
告白は成功するかどうかはわからないけど…
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