8 / 50
(か)鍵
しおりを挟む
大丈夫…誰にも見られてない…
私はゆっくりと鍵を回す。
ベッドにいたのは、まだ若い女だった。
静かな寝息を立てる女の首にネクタイを絡め…そして強く締め上げた。
*
夫は、やはり熟睡していた。
夕食に睡眠薬を仕込んだせいだ。
私は、寝間着に着替え、ベッドに入った。
意外な程に私は落ち着いていた。
さっきの事を思い出してもさして動揺はしない。
(あなたが悪いのよ…)
浮気してる事はわかってた。
だけど、贅沢な暮らしをさせてもらえてたし、そんな事には目を瞑るつもりだった。
なのに、そのうち『泊りの仕事』が水曜だけじゃなくなり…
最近、彼はついに私にはっきりと告げた。
「別れてくれ…」と。
そんなこと出来る筈がない。
友達には、誰よりも幸せな妻だと羨ましがられているのに。
だから、私にはこうするしかなかった。
私だって、本当はこんな事はしたくなかったのに…
彼の財布の中に、大切に入れられていた鍵…
私はそれで合鍵を作った。
私は変装して彼の後をつけ、愛人の家をみつけた。
その家は、郊外の人気のない所にあった。
家の中に入って行く彼を見ても、不思議と嫉妬はしなかった。
もう何年も前からわかっていた事だもの。
私はそれでも良かったのに…
友達から羨ましがられる私でさえありさえすれば、それで良かったのに…
あの日から数日後、愛人の死が報道された。
どうやら、みつけたのは夫だったようだ。
思った通り、家に刑事が来て、夫に殺人の容疑がかかっている事を知らされた。
部屋は密室。
鍵を持ってるのは愛人と夫だけの筈だもの。
そうなるのは当然。
私は夫の浮気さえ知らなかった愚かな妻を演じた。
……私はうまくやった。
バレる事はない。
彼は、殺人犯として収監され、私は可哀想な妻となる…
残念ながら、これからは羨ましがられる事はなくなるだろうけど、可哀想だって構ってもらえるだろう。
(仕方ないわね…)
諦める事も肝心。
私は鍵を、海に向かって力一杯放り投げた。
私はゆっくりと鍵を回す。
ベッドにいたのは、まだ若い女だった。
静かな寝息を立てる女の首にネクタイを絡め…そして強く締め上げた。
*
夫は、やはり熟睡していた。
夕食に睡眠薬を仕込んだせいだ。
私は、寝間着に着替え、ベッドに入った。
意外な程に私は落ち着いていた。
さっきの事を思い出してもさして動揺はしない。
(あなたが悪いのよ…)
浮気してる事はわかってた。
だけど、贅沢な暮らしをさせてもらえてたし、そんな事には目を瞑るつもりだった。
なのに、そのうち『泊りの仕事』が水曜だけじゃなくなり…
最近、彼はついに私にはっきりと告げた。
「別れてくれ…」と。
そんなこと出来る筈がない。
友達には、誰よりも幸せな妻だと羨ましがられているのに。
だから、私にはこうするしかなかった。
私だって、本当はこんな事はしたくなかったのに…
彼の財布の中に、大切に入れられていた鍵…
私はそれで合鍵を作った。
私は変装して彼の後をつけ、愛人の家をみつけた。
その家は、郊外の人気のない所にあった。
家の中に入って行く彼を見ても、不思議と嫉妬はしなかった。
もう何年も前からわかっていた事だもの。
私はそれでも良かったのに…
友達から羨ましがられる私でさえありさえすれば、それで良かったのに…
あの日から数日後、愛人の死が報道された。
どうやら、みつけたのは夫だったようだ。
思った通り、家に刑事が来て、夫に殺人の容疑がかかっている事を知らされた。
部屋は密室。
鍵を持ってるのは愛人と夫だけの筈だもの。
そうなるのは当然。
私は夫の浮気さえ知らなかった愚かな妻を演じた。
……私はうまくやった。
バレる事はない。
彼は、殺人犯として収監され、私は可哀想な妻となる…
残念ながら、これからは羨ましがられる事はなくなるだろうけど、可哀想だって構ってもらえるだろう。
(仕方ないわね…)
諦める事も肝心。
私は鍵を、海に向かって力一杯放り投げた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
今日も明日も神様日和
神在琉葵(かみありるき)
ファンタジー
あるおとぼけ神様とそのお付きの神様見習い(?)との日常は、なんだか妙に心地良いものだったのです…
お題は、無理やりな使い方のものもありますが
やまガール
BBQ(バーベキュー)
停電
ある夜
15年前
ロウソク
電車の旅
神様
部活
ポップコーン
の、全部を使ってみました。
「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話
赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。
「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」
そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語
気まぐれカフェ
まゆら
大衆娯楽
好きな食べ物、季節の食べ物、ダイエット食、スイーツ、ロカボスイーツ等‥
食にまつわるあれやこれ。
ぽっこりおなか救済レシピ
やせ箘育成レシピ
ダイエットしたいけど、美味しく食べたいし、健康も意識したい!
欲張りでズボラに美味しく!
グルメではないけど!
美味しいは楽しい!
簡単に美味しくをモットーに作る行程が少ないレシピをアップ!
美容については勉強中なのでいい情報があったら共有します!
全てダイエッター用のレシピではないのでお気をつけて!
ひとり暮らし用のズボラ飯も多数!
表紙はノーコピーライトガール様からお借りしております!
俗物夫婦回帰転生
Jaja
大衆娯楽
幼稚園の頃から幼馴染でそのまま大学卒業後に結婚。
夫は働きたくないので、たまたま競馬で当たった金を使ってトレーダー兼ギャンブル配信者へ。
妻はその活動を手助けしていた。
しかし気付けば二人もまもなく四十代。
若い頃はチヤホヤされていても、この歳になると中々きつい。
貯金はあるので生活は出来るが、二人は何処かやるせなさを感じていた。
そんなある日、夫婦で買い物の為に車で移動してると対向車が突っ込んで来た。
二人はあっさりその命を散らす事になったのだが…。
これは高校入試前に回帰転生した夫婦が、やっぱり働きたくないので、未来の知識を使ってチヤホヤされる為に奮闘する物語。
※作中で法を犯す事がありますが、物語という事を御理解下さい。
くれぐれも真似しないようにお願いしますね。
※この作品はカクヨム様にも投稿しています。
カオルの家
内藤 亮
大衆娯楽
出されなかった貴方の手紙。 僕が届けました。
宥己は、伯母の馨に幼い頃から可愛がってもらった。馨は小学生の頃に事故で亡くなって、馨との思い出はそこで途絶えている。
ある日、宥己が部屋の掃除をしていると、伯母が出そうとしていた葉書をみつけた。
宛名は芳。
芳は馨の古くからの友人で、伯母のことを良く知っているらしい。
思い出に導かれるように、宥己は芳に会いに行く。
約90000文字で完結します。
エブリスタ、ヒューマン部門にて最高二位。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる