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(あ)会いたい

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「ジョアン!……あっ……」



 夢だった。
すごく久しぶりに昔の恋人、ジョアンと会っている夢を見た。
 夢の中では、僕達はまだ熱い恋人同士だった。


ジョアンの家は牧場を営んでいる。
 僕は、研究者で、新薬の開発に取り組んでいた。



そう…彼女との破局の原因は、そういうことだったんだ。
 彼女は、家業である牧場を継いでくれる人との結婚を望んでいた。
でも、僕は…やはり、自分の好きな分野を諦めることは出来なかった。



だから、別れた。
 僕は故郷を離れ、それから数年後、同じ研究所のメアリーと結婚し、子供こそいなかったが、それなりにうまくいってると思ってた。
だけど、昨年…メアリーから一方的に別れを切り出された。
 好きな人が出来たとのことだった。



 一人になって、寂しい気持ちがジョアンのことを呼び起こしたんだろうか?
 夢の中の彼女は、まだ若いままで、明るく美しかった。



それから何日も彼女のことが頭から離れず…日を追うごとに会いたい気持ちは強くなっていった。
その気持ちは押さえきれない程に膨らんで…僕は、彼女に会いに行くことを決めた。



 *



 「ジョアン!」



 改札を出た途端、ジョアンに出会った。
それなりに老けてはいたけど、すぐに彼女だってわかった。



 「まぁ、アレクじゃないの!久しぶりね!」

あの夢は、もしや正夢なのか?
 奇跡的な再会に、なんだか胸が躍る。



 「あ、あの…ジョアン…今、君は…」

 「あ…あなた、ここよ~!」



 (え?あなた…?)



 振り返ると、金髪のイケメンが同じように手を振っていた。



 「紹介するわね。夫のリッチーよ。」

 「あ、は、初めまして。」



 残念ながら、僕の夢は正夢ではなかったようだ。
でも、ジョアンが幸せそうで良かった。



なんて、強がりかもしれないけど…



逞しく男前のリッチーの前で、僕は曖昧に笑うしかなかった。
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