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 (あぁ、疲れた……)



 今日は部屋の引っ越しやらなにやらで忙しいということで、行きも帰りも早乙女さんの車には乗せてもらえなかった。
バンドメンバーだからって、そんなことまでしてもらうのは悪いとかなんとか思いながら、いつの間にかそうしてもらえるものだと思い込んでたから少々落胆してしまったけど…



(そうそう、今まで通りだって考えれば、なんてことないさ。)



 「ただいま~」

 家の中は妙に静まり返っていた。



 「お~い、誰かいないのか~?」

 俺の声に応えてくれる者はいなかった。
 多分、皆、居間にいるんだろう。
なんとも寂しい気持ちを感じながら、俺は着替えを済ませ、居間に向かった。



 「あ、山田、お帰り~」

 思った通り、居間には皆が集まっていた。
まず、最初に目についたのが、広くなった居間にぴったりな大型サイズのテレビだった。
しかも、DVDまで付いてるぞ。



 「テレビ…どうしたんだ?」

 「ユキちゃんが家から持って来たんだ。」

 「家からって……」

 「これからは私もここに住ませていただくので、それで、私のを持って来たんです。」

 「ここの小さいテレビはあたしの部屋にもらったよ。」

 「え…あれ…俺のテレビなのに……」

 「あんた、働いてるし、テレビなんて見る時間ないじゃないか。」

なんて勝手な言い分なんだろう…
それはともかく、家にこんなでかいテレビがあるなんて…
早乙女さん、確か、一人暮らしのはずだけど、一体どんな家に住んでたんだ?
もしかして、お金持ちなのか?



 「あ、それからね。
 部屋の引っ越しはほとんど済んだよ。
あたしね、ベッド作ってもらうんだ!」

 「ベッド?そりゃあ良かったな。」

 「山田、俺の部屋、見に来いよ!」

 龍之介も今日はずいぶん機嫌の良さそうな顔をしていて、いつもより明るい声でそう言うと俺の手をぐいと引っ張った。

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