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もしかしたら…だけど…
雨男はまだ小さい頃に親に捨てられたんじゃないだろうか?
それを河童男の家族か、または別の何者かが育てて…
それは、雨男にとっては幸せなことだったのかもしれないけれど、残念ながら、あの森にいるのはどこかおかしな者達だから、その影響を受けてしまって、雨男も自分が人間ではないと思いこんでるんじゃあ…?



そう思うと、雨男のことが無性に気の毒に思えてしまった。
もしも、俺の推測が当たってるとしたら、それこそ俺なんかにどうこう出来るような問題じゃない。
でも、もはや雨男も成人してるし、大人だから、施設に入るっていうのも難しいかもしれないし、何よりこいつはけっこう人見知りが激しいから、そんなことになったらきっと心細い想いをするだろう。
だったら、このままの方が良いのかもしれない。
 俺達としばらく暮らして、もう少し落ち着いて、自分が人間だってくらいのことが認められるようになったら…その時に然るべき機関の世話になれば良いじゃないか。



 「雨男!来週あたり、商店街に靴を買いに行こう!」

 「え?やだよ、おいら、そんな所に行けないよ…」

 「そりゃあ確かに遠いけど、早乙女さんの車に乗せてもらったら、すぐだぞ。」

 「山田が買って来ておくれよ。」

 雨男は、商店街が遠いから行きたくないんじゃなくて、人の多い所に行きたくないんだ、きっと。



 「…わかったよ。
じゃ、どんな靴が良いんだ?」

 「おいら…靴ははいたことないからわからない。」

 「じゃ…じゃあ、色はどんなのが良い?」

 「色……う~ん……」

 雨男は、頭をひねり、妙に考え込んでいる。



 「決まらなかったら、俺が……」

 「あ……」

 俺が決めて良いかと聞こうとした時、雨男はなにかをひらめいたように小さな声を漏らした。




 「あ…あの…おいら…ゆきだるまと同じのが良い。」

 急にもじもじし始めた雨男が、おかしなことを口にした。




 「ゆきだるまって…??」

わけがわからずぼうっとしていると、雨男は俺の手を取り、歩き出した。
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