鐘の音を聞きながら

現実は……

１

「うえーーーー…よくもこんなこと書けたもんだな。」

 自らが書いたブログを読み返し、私は胸が悪くなるのを感じた。



 一応、設定は若い女の子。
う～ん、二十代半ばあたりかな？
 容姿は中の上、おしゃれでおちゃめで性格的にも男の子からけっこう好かれるタイプ。
イケ面の彼氏とラブラブで、これといって問題のない楽しい日々を過ごしている……みたいな……



（はぁ……）



だけど、現実の私と来たら、結婚はおろか、彼氏もいなけりゃ、これといった遣り甲斐もない仕事を黙々とこなすだけのつまらない日々を過ごしていて……
大晦日だっていうのに、大掃除どころか普通の掃除すらずっとしてないから、散らかり放題、足の踏み場のない部屋でパソコンに向かってる。
こたつの上のみかんが妙に切ない。



ちょっとした悪戯心っていうか、憂さ晴らしっていうか、願望っていうか……
そんな所から始めたこのブログももうじき一年……



ご～ん、ご～ん……

テレビで、毎年恒例の除夜の鐘を撞く光景が流れ始めた。



 早かったなぁ……
年を取ると一年が早いっていうけど、まさにその通り。
それにしても、こんな大嘘のブログを一年も書き続けてしまうとは本当に思わなかった。
けっこうアクセス数もあるんだよなぁ……



除夜の鐘と共に、私の煩悩が清められるようにと祈りながら……
私は、すでに元日のブログの構想を練っていた。



うん、やっぱり、今日は初ネタだな…！



 ～fin