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「おぉ…ペガサスが元に戻った…」

 「良かった…」

ジェームスと王様は、胸を撫でおろしました。



 「そうだ!王様!
 王子様の棺を今すぐ庭に…!」

 「なに、王子の棺を…?」

 「どういうことだ?」

 「もし、私の推測が当たっていれば、奇跡が起きるかもしれません。」



ジェームスの言葉に、王は訝し気な顔をしながらも言われた通りにしました。



 皆の見守る中、ペガサスはゆっくりと、王子の棺に近付き、そっと息を吹きかけました。



 「う…うぅん…」

 「サ、サミュエル!」



 王子が息を吹き返したのです。
 王は、大きく目を見開いて、サミュエル王子をみつめます。



 「良かった……サミュエル様…
本当に良かった…」

ジェームスはその場に頽れ、涙を流しました。



 「ジェームス、これはどういうことだ?」

 「はい、王様。
ペガサスは、神様が私達を見守っている証にと下さった馬…
きっと、この度の不幸な出来事も、解決して下さるのではないかと思い付いたのです。」

 「そうであったか…サミュエルを救ってくれたこと、まことに感謝する。」



 ***



サミュエルが生き返ったことで、アデリナは牢獄から釈放されました。



ペガサスは、またクロッケン山の洞窟に戻されました。
エリックが持っていた赤い木の実を洞窟の前に植えると、驚くべき速さで木は成長し、次の日には実がなりました。



ペガサスの世話は今まで通り、ジェームスがすることになりました。
アデリナは、もう二度とあの洞窟に行かないことを約束させられました。



 今夜もまた美しい笛の音が響きます。



 (ペガサス…素敵な調べをありがとう…)



 丸い月の下で、アデリナはブロッケン山のペガサスに想いを馳せました。
これからもずっと、この町の民が幸せであるようにと祈りを込めながら…

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