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結局、僕にはこんな時に行くあてもなく…そして、あんな父さんでもやはり見捨てることは出来なくて……
見捨ててやる!と思っては、思い出すことがある。
今の父さんは本当に酷いものだけど、でも、それは父さんの一部なんだってこと。
威厳があって、厳しいけれど、愛情深い…そんな父さんの一部なんだとわかってるから、やっぱり父さんを見捨てるわけにはいかない。
いや…もしかしたら、僕はひとりぼっちになることが怖かっただけなのかもしれない。
見捨てられるのを恐れているのは、本当は僕の方なのかもしれない。
僕は、一晩だけ家に帰らず、その後は何もなかったように家に戻った。
父さんも何も言わなかった。
酔っていたから、あの時の記憶もないのかもしれない。
それからも、繰り返されるいつもと同じ喧嘩ばかりの日々……
そんなある日のこと、僕は店主に呼びつけられた。
「おい、カミーユ……おまえ、ローランド様のお屋敷で一体何をした!?」
「え?……どういうことですか?」
「ローランド様からクレームが来た。
おまえを二度と配達に寄越さないようにってな。
これからも寄越すようなら、もう取引はしないとたいそうおかんむりだったぞ!」
「な、なぜ……」
僕は、あの時、ダニエルに似た男の名前を聞いただけだ。
それなのに、なぜ、そんなことを……
その時、僕の脳裏にある想像が思い浮かんだ。
(そうか…そういうことだったのか…)
これですべて腑に落ちた。
やはり、あれはダニエルだったんだ。
僕のような貧しく薄汚い者が双子の兄弟だとまわりに知られては困る。
だから、そんなことを……
ダニエルへの思慕が一瞬にして憎しみに変貌した。
見捨ててやる!と思っては、思い出すことがある。
今の父さんは本当に酷いものだけど、でも、それは父さんの一部なんだってこと。
威厳があって、厳しいけれど、愛情深い…そんな父さんの一部なんだとわかってるから、やっぱり父さんを見捨てるわけにはいかない。
いや…もしかしたら、僕はひとりぼっちになることが怖かっただけなのかもしれない。
見捨てられるのを恐れているのは、本当は僕の方なのかもしれない。
僕は、一晩だけ家に帰らず、その後は何もなかったように家に戻った。
父さんも何も言わなかった。
酔っていたから、あの時の記憶もないのかもしれない。
それからも、繰り返されるいつもと同じ喧嘩ばかりの日々……
そんなある日のこと、僕は店主に呼びつけられた。
「おい、カミーユ……おまえ、ローランド様のお屋敷で一体何をした!?」
「え?……どういうことですか?」
「ローランド様からクレームが来た。
おまえを二度と配達に寄越さないようにってな。
これからも寄越すようなら、もう取引はしないとたいそうおかんむりだったぞ!」
「な、なぜ……」
僕は、あの時、ダニエルに似た男の名前を聞いただけだ。
それなのに、なぜ、そんなことを……
その時、僕の脳裏にある想像が思い浮かんだ。
(そうか…そういうことだったのか…)
これですべて腑に落ちた。
やはり、あれはダニエルだったんだ。
僕のような貧しく薄汚い者が双子の兄弟だとまわりに知られては困る。
だから、そんなことを……
ダニエルへの思慕が一瞬にして憎しみに変貌した。
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