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本編 最終部 ~運命の姫君はパーティーにて~

初めてのパーティーは・・・

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殿下にエスコートされて迎える事が出来ると思っていなかった私の誕生パーティーには、
有り難い事に多くの人が足を運んで下さっており・・・お父様の計らいでとても豪勢な仕上がりになっていた。

(まさか・・・こんなパーフェクトな形でこの日を迎えられるとは思っていなかったわ・・・。)

隣には見目麗しい第二王子のルークフォン様という、これ以上ない婚約者を連れて・・・
そんな殿下に贈って頂いた揃いのドレスを身に纏い、私たち2人は側から見れば相思相愛に映っているに違いないし・・・私は国一番の幸せ者だと思われているだろう・・・。

「おめでとう御座います、フローラ様」
「おめでとう、フローラ嬢」

会場に入るや否や、すれ違うゲスト全員にそう祝いの言葉と拍手を頂いた私は・・・ずっと会釈を続けながらもダンスホールの中央へと向かう。

誕生パーティーでの一般的な流れとしては・・・主役が入場したら先ずワルツを一曲踊るのが習わしだ。
この一曲目のお相手がとても大事で・・・婚約者が居るのであれば必ず婚約者と。
決まった相手が居ない人は、意中の殿方に声を掛けたりもする様だが・・・これは非常に珍しいパターンだ。
ほとんどの人は、年齢の近い親族の男性に頼んでお相手を務めて頂くという感じだろうか。

(私も、婚約破棄をしたらお兄様にお願いしようと思っていたしね・・・。)

「フローラ・・・本当に俺で良かったのか・・・?」

ダンスホールの中央でワルツの形に手を組みなおしていると・・・殿下が耳元でそう囁いて来た。



「殿下ほど今日という日に相応しいお相手は居ませんが・・・?」



質問の意味がよく分からなかった私は・・・取り敢えずそう答えた。
だって実際、今日という日を殿下以外の殿方にエスコートして頂いても・・・第二王子に婚約破棄された哀れな主役として見世物になるだけだったと思うから・・・。

(未来の王妃様になる気なんてさらさら無いけど・・・今日という日に殿下のエスコートを受けられたこと自体は、とても有り難い事なのよね・・・。)

「だから・・・殿下、有難う御座います。このドレスも、今日のエスコートも・・・私、とても素敵な18歳初日を迎えられそうです・・・!」

殿下とこのまま婚姻関係を続けていく気こそ無いが・・・これはこれで私の本心だ。
満面の笑みでそう感謝の言葉を伝えた。

「・・・・・・・・・~っ!!」

殿下は面と向かって感謝を伝えられる事に慣れていないのか、照れた様子でぷいと目線を私から離した。
それとほぼ同じタイミングでワルツの演奏が始まり、殿下のリードが始まる。

(私・・・そう言えば、殿下以外の男性とダンスを踊った事無いけれど・・・きっと、凄く上手よね?)

流れる様に・・・欲しい場所に欲しいタイミングで手が差し出されて、私がミスをしてもミスになる前にフォローしてくれる。
講師の先生には申し訳ないが・・・先生よりも殿下のリードは素晴らしいものだった。

(これが最後かもしれない・・・と思うと、名残惜しいわね。ダンスも・・・殿下も・・・。)

それでも・・・5回目の婚約破棄は私からすると決めている。
ただ、今回に限って・・・何故か殿下が私に対して凄く良くして下さったものだから・・・

(まぁ、どうせ17歳最後の日に婚約破棄されるし~!その時が来たらこっちから言ってやるわ・・・!)

と呑気にずるずる先延ばしにしてしまった結果がこれである。
学園を卒業する前迄には何としてでも婚約破棄して差し上げなくては・・・。

過去4回の間に受けた冷遇の数々は、一先ず置いといたとしてーーー
今回に限っては殿下を振り回した自覚もあるし、我儘を聞いて頂いた記憶もあるのだ。
一方的に婚約破棄を叩きつけるのは些か良心が流石に痛んでしまう・・・。

(想い人と上手くいく様に・・・早く何とかしなくては・・・!!!)

そうなって来ると・・・厄介なのがライバルのサイラスである。
あのお色気モンスターと長時間2人きりというのは、正直ハードルが高い。・・・いや、多分無理。

(殿下の為に頑張ってあげたいけど・・・何処まで持ち堪えられるか・・・)



「・・・ぷっ、」


ふと考え事をしていると頭上から笑いを我慢しきれなかったという様子の殿下の声が聞こえる。

「何か面白い事でも有りましたか・・・?」

ワルツを踊っている最中だと言うのに・・・そんな体を震わしてまで我慢しなくてはいけない程の面白い出来事が起こるとも思えないが・・・殿下はもうプルプルと震えて笑いを堪えていらっしゃる。

「フローラの表情があまりにもコロコロと面白く変わるから・・・すまん、笑ってしまった。」

「はぁ・・・。まぁ、そんな事で殿下が笑顔になって下さるので有れば・・・お安いものですから・・・どうぞ?」

踊りながらあれよこれよと考えている間に、どうやから私の表情筋まで動いてしまっていたらしい・・・。
私としては全くの無意識だったが・・・まぁ、私のそんな表情で疲れていた様子の殿下が笑顔になってくれるのであれば、安いものでしょう。

「もうすぐ曲が終わるな・・・。」

寂しそうな表情でそう零した殿下の姿に思わず深く考えずに返してしまった。

「まだ踊り足りないのであれば・・・また、誘いに来て下されば・・・?私で宜しければ何度でも!」

(って、あああ!私、ワルツ以外は超下手っぴだから・・・今までずっと逃げ続けて来たのに・・・!何という事を・・・!)

我が国の舞踏会やパーティーでの一曲目と言えば・・・ワルツである。
だから・・・殿下と絶対に踊らなくてはいけないワルツだけは猛練習して何とか形にしたのだが・・・
それ以外のダンスはからっきし駄目なので、今までワルツ以外のダンスは壁の花に徹していたのだが・・・。

   (断れ~!断れ~!)

自分で言っておきながら失礼極まりないが・・・そう念を送り続ける。

「嬉しいよフローラ。では・・・ラ・ボルタの時にまた誘わせてくれ?」

「よ、よ、ヨロコンデ、殿下・・・。」

私にはどうやら念能力の才能は無いらしいし・・・ダンスの才能も無いという事を恐らく今日中に殿下に知らしめる事になるであろうと強く確信した。

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