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本編 第二部 ~噂の姫様は初デートにて~

【幕間】▷▶︎▷ 私の女神様 2

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「おはよう、エレノア?」

(おかしい・・・。おかしいわ・・・、)

「お、おはようございます・・・。お父様。」

(茶会の日から一晩明けたと言うのに・・・)

「エレノア、どうしたの?早く席に着きなさい。」

(何故、何も・・・お小言さえも無いと言うのーー!?)

「ーーえ、あ、はい。お母様・・・。」






私はあの茶会で殿下の婚約者であるフローラ嬢と派手に騒動を起こした。
しかも、こちら側に非がある事は明白で殿下も分かっていらっしゃる。

運が悪ければ不敬罪に問われ、運が良くてもお父様からのお小言は必須だと覚悟を決めていたと言うのにー・・・。

(そもそも殿下は、貴族界での事に首を突っ込みたがるタイプではありませんから・・・今回の騒動はフローラ嬢に一任している可能性が極めて高いと考えられますわね・・・。)

思い返せば・・・成り立てほやほやとは言え、爵位の高いフローラ嬢に仕出かして来た悪事の数々ー・・・。

(決して許されるものでは有りませんわー・・・。なのに何故?フローラ嬢は殿下にも、アナスタシア公爵様にも、私の事を言っていない・・・?)

気になって居ても立ってもいられなかった私は、屋敷へ伺いたいとアナスタシア公爵邸へと使いを出した。

(まぁ・・・普通に考えれば、絶対に断られるでしょうけどーーー。断り方で私の事をどう思っているか位は分かりますし・・・、)

ただ、聞き届けられる可能性も0では無いと思っている。
茶会で言われたあの言葉ーーー。



『私とお友達になってくれませんか・・・?』



あんな事を言われるとは思っていなかったし、私自身・・・貴族の嗜みとして群れて行動はしていたが、どのご令嬢も〝お友達〟という訳では無かった。
群れの中には優劣がハッキリと決まっており、あれは・・・言わば小さな貴族社会の様なものだった。

(もしかして・・・本当に私何かを〝お友達〟に望んでいらっしゃると言うの・・・?だから、あんなひどい事をした私を許し、敢えて沈黙を守っていると言うのかしらーーー?)

いや、そんな都合が良過ぎる事がある訳ないと、私は首を振ると甘い考えを頭から追い出した。
窓を見ると使いの者がアナスタシア公爵邸から戻って来たのが見えたので、私は慌てて玄関ホールへと向かった。





「え?ーーー本当にフローラ嬢、本人がそう仰ったの?」

「はい。満面の笑みで是非にと。お待ちしております。と仰っておりました。」

「あ、そうー・・・。ご苦労様、下がって良いわよ?」



フローラ・アナスタシア・・・。
まさか貴女がこんなに甘い人だったとはね。
どうやらフローラ嬢は、今回の騒動の事で私を咎める気は一切無いらしい。





「ふふっ、はぁ・・・、完敗だわーーー・・・。」





(私が逆の立場だったら、恐らくここぞとばかりに完膚無きまでに叩き潰すでしょうね。)

でも彼女は何もして来ない・・・。それ所か、私が泣き崩れれば胸を貸してくれる様なお人。

(彼女はもう王妃としての振る舞いを身に付けていらっしゃるわ・・・。殿下のお気持ち等無くても・・・、私なんかが敵う相手ではありませんわね・・・。)

ーーーならば私は?私の出来る事は?
咎が無い以上、誠意を見せるしか無いと思った私は、私室の机に久方ぶりに座った。
いつもなら使用人達に代筆させている山の様に積まれている招待状の全ての返事を描き始めた。





〝フローラ・アナスタシア公爵令嬢が出席される場合のみ、出席致します〟とーーー。





こんな馬鹿な私にきちんと言葉をくれた貴女だから・・・

こんな弱い私に胸をかしてくれた貴女だから・・・

こんな愚かな私に手を差し伸べてくれた貴女だから・・・

私も〝お友達〟になりたい。

そして願わくば・・・貴女の隣でずっと支え合いたい・・・。



フローラ・アナスタシアーーー。
貴女は間違いなく私の人生の恩人で救世主。

次に貴女と会えたら・・・
ファーストネームで呼び合って、いつも天の邪鬼な事を言ってしまう自分を捨てて・・・
素直な自分で色んなお話をしたい。














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