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#side ルークフォン ~初恋の人を求めて~
初恋の人は真実を知る・・・1
しおりを挟む「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・?」
彼女が紅茶を啜る音だけが部屋に響いていた。
俺の顔が一向に上がらない事に気が付いた彼女は、クエスションマークを振りまき始めていた。
俺は最初こそ企みを悟られない様にと顔を伏せていたのだが・・・今は違う意味で顔を上げられないで居た。
(止めてくれ・・・フローラっ、声を我慢出来なくなってしまう・・・)
身振り手振りを加えながら,目の前で繰り広げられるフローラの百面相に俺は・・・顔を上げるタイミングを完全に失ってしまっていた・・・。いや、顔を上げられなくなってしまった・・・と言う表現が正しいのかもしれない・・・。
「あの・・・、今日は本当になんというか・・・とても助かりましたわ。先程は・・・一方的過ぎましたわよね?ごめんなさい・・・。」
「・・・・・・・・・。」
(どうしたんだ・・・?先程まではあんなに怒り狂っていたと言うのに・・・謝るなど・・・?)
フローラの変わり身の早さについていけなかった俺は、何と答えれば彼女を怒らせなくて済むのかが分からず、無言を貫く形となってしまった。
「私は殿下に相当嫌われてしまっている様ですわね・・・。今日は良い夢を見させて頂きましたわ。・・・・・・よくよく考えてみれば、貴方が殿下に報告しなくても、出席者の方々があれだけいらっしゃったのだから、遅かれ早かれ殿下の耳には入ると思いますし、報告は貴方にお任せしますわ。」
「・・・・・・・・・。」
(いや、前回迄は確かに・・・婚約破棄までのカウントダウンを消化する為に会っていただけの・・・苦行に近いものが有ったが・・・)
そこまで考えると俺も大概身勝手な振る舞いをしていた事を痛感した。
そもそも俺が怒っていると思っているらしいフローラは完全に反省モードだ。
俺は全然怒ってなどいないのだが・・・いや、怒っていると思って貰っていた方が都合が良いか・・・。
(彼女がノーと言い難い状況を作る為にも・・・敢えて否定せずこのままにして置こう。)
「その代わり、一つお約束して頂きたい事が有りますの・・・」
「・・・・・・・・・?」
先程までとは声質が変わったフローラを思わずチラリと覗くと、俺の顔を見るや少し驚いた様子だった。
(もう・・・フローラに仮面など必要ない・・・。)
思わず長年の癖で取り繕ってしまいそうになる自分をそう律すると、俺はそのままフローラを真っ直ぐ見据えた。
すると彼女も真剣な眼差しで覚悟を決めたかの様に大きく息を吸いこむと、口を開いた。
「もう二度と殿下の影武者なんてするのは、やめなさい。」
どこまでも真っ直ぐな彼女の真剣な眼差しに、これ以上騙す様な事を続けるのは流石に心苦しくなってしまった俺は、タイミングもちょうど良いので、企みを実行へと移した。
「フローラ・・・帰る前に会わせたい人が居るんだ。良いか?」
「へ・・・?」
俺のまさかの返答に思わず開いた口が塞がらないかの様な、気が抜けた様な返事をしたかと思えば・・・途端に断りの文句を考えているのか、頭を悩ましていた。
「時間は取らせないと約束する。」
「それならば・・・お願い致します。」
俺の追加攻撃にあえなく撃沈してしまった彼女は嫌そうに承諾の返事をしてくれた。
その返事を聞いた俺は執事のサイラスを部屋へと呼び付ける為に、部屋の扉を少しだけ開けると・・・部屋の扉が見える向こう側の廊下で待機していたメイド長を呼び付けた。
「サイラスを、サイラス・クリプトンを呼べ。緊急事態ゆえ、5分以内に必ず連れて来るように・・・急いでいる事を誰にも悟れぬ様にな」
「でっ、殿下・・・その、大変申し訳ないのですが・・・流石に5分では難しいかと・・・!」
「安心しろ。サイラスとならば・・・必ずすぐに出会える筈だ。」
(どうせ、何処かでこの部屋を盗聴している筈だからな・・・あの腹黒野郎は・・・!)
「へ・・・?あの・・・」
「嘘だと思うのなら、とりあえず行ってみると良い。すぐにサイラスと会えるだろうからな・・・」
「か、かしこまりました・・・。」
メイド長は全く意味が分かっていない様子だったが、とりあえず急ぎ足で王宮の廊下へと消えて行った。
それを見届けて扉をパタンと閉めると、扉の向こう側から誰かが高い所から着地した様な音と走り去る足音が聞こえて来たので、俺は振り返りフローラに一応忠告しておいた。
「すぐに来るから・・・菓子はほどほどに・・・ね?」
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