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番外編〜太陽と野菜とマチルダさんと〜
幕間 馬鹿な女で助かった
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「マチルダ・ハンメルン嬢・・・ですか?」
「——えぇ?私の事ですけれど・・・どちら様ですか?」
「失礼致しました・・・!ずっと探し求めていた女性が目の前に居るものですから・・・少し動揺してしまった様です。私はモンド伯爵家次男のダージンと申します。」
「まぁ!!あの有名なモンド伯爵家の?!」
「昔、何回か夜会でお話した事が有るのですが・・・覚えていらっしゃいませんか?」
「私ったら・・・御免なさい。貴方の様な素敵な殿方、見たら絶対に忘れないと思うのですが・・・。でも、貴方が私を探し求めて下さっている事は、ずっと感じておりましたわ!!!」
「そ、そうなんですか・・・」
「ええ!!!これは、星のお導きによる運命の出会いですわね!!私、ずっとお待ちしておりましたのよ?」
「こ、光栄です・・・マチルダ嬢」
「それで?私はいつ頃迄に伯爵家へと嫁ぐ準備をしたら宜しいのかしら??」
「へ?!!嫁ぐ・・・?!!」
「あら?ダージン様は私が運命の相手だと思って探し出して下さったのですよね?運命の相手と結婚するのは普通の事では??」
「ももも勿論・・・行く行くはそうしていきたいと考えているが・・・!私も次男とはいえ貴族なんだ。マチルダ嬢を迎える為にはそれ相応の根回しとか・・・色々と必要な事が沢山あるんだよ?!」
「ええ、ええ・・・この私の魅力の虜になってしまう殿方が沢山いらっしゃいますでしょうからね・・・周知徹底はして頂いた方が宜しいかと思いますわ?」
「・・・・・・・・・。——そうだろう?だから、この事は未だ2人だけの秘密にしておいて欲しいんだよ。」
「勿論で御座いますわ。私、そこら辺は弁えておりますから・・・ご安心下さいませ!!」
「では・・・また近況報告をしに来るから・・・。次の満月の夜、そこの大きな木の下で会わないかい?」
「次の満月の夜ですわね・・・!楽しみに待っておりますわ・・・!」
(ふぅ~・・・今回の女も馬鹿な女で助かったぜ。)
俺の名前は、ダージン・モンド——な訳は無い。
俺はスラム育ちでここら辺を狩場にしている盗賊団の一員、ポーターだ。
この郊外には、没落した元貴族様が人目を避ける様に多くやって来る。
そして——元でも貴族令嬢の価値は高く、闇オークションで秘密裏に売買されている事は裏稼業界では有名な話だ。
別に女1人位、無理矢理攫うのは簡単だが・・・騒ぎを起こせば簡単に騎士団に捕まっちまう。
ここの所、かなりここら辺は警戒されているらしく、今日の昼間も騎士団の奴等がうろついてやがったからな。
それで、盗賊団の中でも比較的、女受けの良い顔をしている俺が貴族風の服を身に纏って、
モンド伯爵家の次男様に成り済まして、ターゲットをおびき出すって戦法だ。
モンド伯爵家の次男に成り済ましているのにも訳が有る———。
実は、このダージン・モンドっていう貴族の御子息様は、ほとんど公の場に姿を現して居ないらしい。
おまけにあの有名なモンド伯爵家の次男の癖に未だ未婚約だ。
没落令嬢達は・・・あわよくば、貴族だった頃に戻りたいと夢を見ている奴がほとんどだ。
そんな女の前に現れて「ずっと探していた」と言えば・・・モンド伯爵家という肩書とロマンチックな展開に女達は、コロリといっちまうって訳だ。
(だが・・・今回のマチルダって女は、今までの女の比じゃねぇな・・・星の導きとか言ってなかったか?!)
あんなのが・・・本当にハイネス公爵家嫡男の婚約者の姉なのか?
やっぱり、あのゴシップ紙はデマじゃねぇのか?と、思わずため息をついちまった。
(まぁ・・・デマだったらデマで、公爵家への身代金請求プランは没で・・・オークションにかければ良いか。)
どうせ月が満ちるまでは・・・あと少しだ。
「——えぇ?私の事ですけれど・・・どちら様ですか?」
「失礼致しました・・・!ずっと探し求めていた女性が目の前に居るものですから・・・少し動揺してしまった様です。私はモンド伯爵家次男のダージンと申します。」
「まぁ!!あの有名なモンド伯爵家の?!」
「昔、何回か夜会でお話した事が有るのですが・・・覚えていらっしゃいませんか?」
「私ったら・・・御免なさい。貴方の様な素敵な殿方、見たら絶対に忘れないと思うのですが・・・。でも、貴方が私を探し求めて下さっている事は、ずっと感じておりましたわ!!!」
「そ、そうなんですか・・・」
「ええ!!!これは、星のお導きによる運命の出会いですわね!!私、ずっとお待ちしておりましたのよ?」
「こ、光栄です・・・マチルダ嬢」
「それで?私はいつ頃迄に伯爵家へと嫁ぐ準備をしたら宜しいのかしら??」
「へ?!!嫁ぐ・・・?!!」
「あら?ダージン様は私が運命の相手だと思って探し出して下さったのですよね?運命の相手と結婚するのは普通の事では??」
「ももも勿論・・・行く行くはそうしていきたいと考えているが・・・!私も次男とはいえ貴族なんだ。マチルダ嬢を迎える為にはそれ相応の根回しとか・・・色々と必要な事が沢山あるんだよ?!」
「ええ、ええ・・・この私の魅力の虜になってしまう殿方が沢山いらっしゃいますでしょうからね・・・周知徹底はして頂いた方が宜しいかと思いますわ?」
「・・・・・・・・・。——そうだろう?だから、この事は未だ2人だけの秘密にしておいて欲しいんだよ。」
「勿論で御座いますわ。私、そこら辺は弁えておりますから・・・ご安心下さいませ!!」
「では・・・また近況報告をしに来るから・・・。次の満月の夜、そこの大きな木の下で会わないかい?」
「次の満月の夜ですわね・・・!楽しみに待っておりますわ・・・!」
(ふぅ~・・・今回の女も馬鹿な女で助かったぜ。)
俺の名前は、ダージン・モンド——な訳は無い。
俺はスラム育ちでここら辺を狩場にしている盗賊団の一員、ポーターだ。
この郊外には、没落した元貴族様が人目を避ける様に多くやって来る。
そして——元でも貴族令嬢の価値は高く、闇オークションで秘密裏に売買されている事は裏稼業界では有名な話だ。
別に女1人位、無理矢理攫うのは簡単だが・・・騒ぎを起こせば簡単に騎士団に捕まっちまう。
ここの所、かなりここら辺は警戒されているらしく、今日の昼間も騎士団の奴等がうろついてやがったからな。
それで、盗賊団の中でも比較的、女受けの良い顔をしている俺が貴族風の服を身に纏って、
モンド伯爵家の次男様に成り済まして、ターゲットをおびき出すって戦法だ。
モンド伯爵家の次男に成り済ましているのにも訳が有る———。
実は、このダージン・モンドっていう貴族の御子息様は、ほとんど公の場に姿を現して居ないらしい。
おまけにあの有名なモンド伯爵家の次男の癖に未だ未婚約だ。
没落令嬢達は・・・あわよくば、貴族だった頃に戻りたいと夢を見ている奴がほとんどだ。
そんな女の前に現れて「ずっと探していた」と言えば・・・モンド伯爵家という肩書とロマンチックな展開に女達は、コロリといっちまうって訳だ。
(だが・・・今回のマチルダって女は、今までの女の比じゃねぇな・・・星の導きとか言ってなかったか?!)
あんなのが・・・本当にハイネス公爵家嫡男の婚約者の姉なのか?
やっぱり、あのゴシップ紙はデマじゃねぇのか?と、思わずため息をついちまった。
(まぁ・・・デマだったらデマで、公爵家への身代金請求プランは没で・・・オークションにかければ良いか。)
どうせ月が満ちるまでは・・・あと少しだ。
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