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番外編〜太陽と野菜とマチルダさんと〜
運命の人現る・・・?!
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それは本当に何の前触れもなく訪れた———。
「マチルダ嬢・・・い、今、何と仰いましたか?」
「ですから・・・!私、この度婚約致しました!と、申し上げたのです。」
それはいつも通り、太陽の下で畑仕事をしているマチルダ嬢が手を泥だらけにしながら言い放った言葉だった。
「まさか・・・星の導きとやらの運命の相手が・・・?マチルダ嬢を迎えにやって来たとでも言うのですか・・・?」
「勿論ですわ・・・!何と——お相手はモンド伯爵家の御子息で在らせられます、ダージン様ですわよ!きゃっ!言っちゃいましたわ!言っちゃいましたわ!」
「———・・・っ?!!!そんな、馬鹿な・・・っ、」
マチルダ嬢の言葉に俺は驚きを隠せず、咄嗟にそう言葉が漏れ出してしまっていた。
「私ったら・・・!ダージン様には未だ根回しをしている段階だから他言無用でと言われていたのに・・・。騎士様、この事はくれぐれも他言無用でお願い致しますわね?」
マチルダ嬢が何か言っているが・・・俺の耳には全く入って来なかった。
衝撃の事実を未だ受け入れる事が出来ずに、自分の頭の中でひたすら「何でだ?」「どういう事だ?」と疑問符が浮かんでは消えるを繰り返し、答えを出すのに必死になってしまっていたからだ。
「・・・・・・?騎士様?如何なさいまして?」
俺の顔を覗き込む様に問い掛けるマチルダ嬢は、俺の困惑の意味が全く分からないらしく・・・心底、不思議そうな表情で俺を見ている。
その声にハッと我に返る事が出来た俺は・・・困惑の表情から慌てていつものニコニコとした表情へと戻した。
「驚いてしまいまして・・・。マチルダ嬢、おめでとうございます。」
「有り難うございます・・・!騎士様・・・!私も近々、伯爵夫人ですからね・・・!どこかの夜会でお会いした時は、ダンスのお相手位なら務めて差し上げても宜しくてよ・・・?おーほほほほっ!」
口に泥だらけの手の甲を添えながら・・・いつもの様に高笑いをしているマチルダ嬢を、今までは微笑ましく見守れていたのに———
何故か今日だけは胸が締め付けられる様な感覚に襲われた。
「分隊長!まぁた、馬走らせて郊外まで行ってたんですか~?」
「・・・・・・煩い。」
「分隊長!公私混同も程々にしないと、そろそろ上から怒られますよ~?」
「・・・お前達なぁ~!!」
騎士団の連中は俺が頻繁に郊外へ行っているのは、マチルダ嬢にアプローチする為だと思っているのか・・・休憩室で見付かればいつもこうなるのだから、溜息だって吐きたくなる。
ちなみに「分隊長」とは俺の事で・・・これでも俺は騎士団で騎馬隊を任せられている分隊長なのだ。
ここは騎馬隊の休憩室で、他の分隊のものと比べるとかなりアットホームな雰囲気だと思う。
理由は簡単だ。
(嫌いなんだよ、ああいうお堅い感じ。)
命令には絶対服従!とか、規律を重じろ!とか、身分とか功績とか親の肩書きとか・・・下らないと思わないか?
少なくとも俺は下らないと思っている。
だって俺たちは貴族じゃないし、王族でもないんだ・・・。
己の剣と体で国を守る騎士なんだから・・・実力主義で有るべきだと思うし、何より部下とか上司とかってより仲間として関わり合いたいと思っている。
「それにしても・・・さっきから何の話で盛り上がっているんだ?」
「え?!分隊長、ハイネス公爵家の御令息が没落令嬢と婚約したって話、知らないんですか?」
ハイネス公爵家———今や第二の王族とも称される、名家中の名家だ。
そしてその御令息であるエドマンド様は・・・とにかく噂の絶えないお方だ。
例えば、東の隣国の気難しい王子様と親友になった——だとか。
例えば、西の隣国の美しいことで有名な王女様が一目惚れしてしまった——だとか。
(噂の真偽はさて置き・・・本当だったら凄い話だな?よく公爵様がお許しになったものだ・・・。)
部下達は噂の婚約者様を見た事が有るとか無いとか・・・西の隣国の王女様は実は不細工なんじゃ・・・とか、
ある事ない事を言い合って話に花を咲かせていたが・・・俺はこの手の会話は避けたいので、着替えを済ますと隣の仮眠室へと移ろうと足を向けたその時だった。
「この婚約者のフレイヤ・ハンメルンって・・・貿易商を営んでいたハンメルン家の娘だろ?俺、昔会った事有るぜ!!」
普段ならこの手の話の中には絶対に入らないのだが・・・今、とんでもないワードが聞こえて来た様な気がしたので、思わず踵を返してしまう。
「今、何と・・・?フレイヤ、ハンメルン・・・?ハンメルンって言ったのか?!」
「・・・へ?!あ、はぁ・・・だってここにそう書いてありますけど・・・?」
指が差された先にあるゴシップ紙を強引に取ると、その箇所を食い入る様に読んでしまった。
途端、俺の中で疑問符だった点が点と繋がり線へとなった。
「──くそっ!そういう事か・・・!」
「へ・・・?あ、分隊長・・・?!何処へ──っ?!」
途端、マチルダ嬢の身が気になってしまった俺は、部下の問いかけを一切無視して全速力で馬舎に戻ると・・・直感を信じて再度愛馬に跨り郊外へと走った——。
「マチルダ嬢・・・い、今、何と仰いましたか?」
「ですから・・・!私、この度婚約致しました!と、申し上げたのです。」
それはいつも通り、太陽の下で畑仕事をしているマチルダ嬢が手を泥だらけにしながら言い放った言葉だった。
「まさか・・・星の導きとやらの運命の相手が・・・?マチルダ嬢を迎えにやって来たとでも言うのですか・・・?」
「勿論ですわ・・・!何と——お相手はモンド伯爵家の御子息で在らせられます、ダージン様ですわよ!きゃっ!言っちゃいましたわ!言っちゃいましたわ!」
「———・・・っ?!!!そんな、馬鹿な・・・っ、」
マチルダ嬢の言葉に俺は驚きを隠せず、咄嗟にそう言葉が漏れ出してしまっていた。
「私ったら・・・!ダージン様には未だ根回しをしている段階だから他言無用でと言われていたのに・・・。騎士様、この事はくれぐれも他言無用でお願い致しますわね?」
マチルダ嬢が何か言っているが・・・俺の耳には全く入って来なかった。
衝撃の事実を未だ受け入れる事が出来ずに、自分の頭の中でひたすら「何でだ?」「どういう事だ?」と疑問符が浮かんでは消えるを繰り返し、答えを出すのに必死になってしまっていたからだ。
「・・・・・・?騎士様?如何なさいまして?」
俺の顔を覗き込む様に問い掛けるマチルダ嬢は、俺の困惑の意味が全く分からないらしく・・・心底、不思議そうな表情で俺を見ている。
その声にハッと我に返る事が出来た俺は・・・困惑の表情から慌てていつものニコニコとした表情へと戻した。
「驚いてしまいまして・・・。マチルダ嬢、おめでとうございます。」
「有り難うございます・・・!騎士様・・・!私も近々、伯爵夫人ですからね・・・!どこかの夜会でお会いした時は、ダンスのお相手位なら務めて差し上げても宜しくてよ・・・?おーほほほほっ!」
口に泥だらけの手の甲を添えながら・・・いつもの様に高笑いをしているマチルダ嬢を、今までは微笑ましく見守れていたのに———
何故か今日だけは胸が締め付けられる様な感覚に襲われた。
「分隊長!まぁた、馬走らせて郊外まで行ってたんですか~?」
「・・・・・・煩い。」
「分隊長!公私混同も程々にしないと、そろそろ上から怒られますよ~?」
「・・・お前達なぁ~!!」
騎士団の連中は俺が頻繁に郊外へ行っているのは、マチルダ嬢にアプローチする為だと思っているのか・・・休憩室で見付かればいつもこうなるのだから、溜息だって吐きたくなる。
ちなみに「分隊長」とは俺の事で・・・これでも俺は騎士団で騎馬隊を任せられている分隊長なのだ。
ここは騎馬隊の休憩室で、他の分隊のものと比べるとかなりアットホームな雰囲気だと思う。
理由は簡単だ。
(嫌いなんだよ、ああいうお堅い感じ。)
命令には絶対服従!とか、規律を重じろ!とか、身分とか功績とか親の肩書きとか・・・下らないと思わないか?
少なくとも俺は下らないと思っている。
だって俺たちは貴族じゃないし、王族でもないんだ・・・。
己の剣と体で国を守る騎士なんだから・・・実力主義で有るべきだと思うし、何より部下とか上司とかってより仲間として関わり合いたいと思っている。
「それにしても・・・さっきから何の話で盛り上がっているんだ?」
「え?!分隊長、ハイネス公爵家の御令息が没落令嬢と婚約したって話、知らないんですか?」
ハイネス公爵家———今や第二の王族とも称される、名家中の名家だ。
そしてその御令息であるエドマンド様は・・・とにかく噂の絶えないお方だ。
例えば、東の隣国の気難しい王子様と親友になった——だとか。
例えば、西の隣国の美しいことで有名な王女様が一目惚れしてしまった——だとか。
(噂の真偽はさて置き・・・本当だったら凄い話だな?よく公爵様がお許しになったものだ・・・。)
部下達は噂の婚約者様を見た事が有るとか無いとか・・・西の隣国の王女様は実は不細工なんじゃ・・・とか、
ある事ない事を言い合って話に花を咲かせていたが・・・俺はこの手の会話は避けたいので、着替えを済ますと隣の仮眠室へと移ろうと足を向けたその時だった。
「この婚約者のフレイヤ・ハンメルンって・・・貿易商を営んでいたハンメルン家の娘だろ?俺、昔会った事有るぜ!!」
普段ならこの手の話の中には絶対に入らないのだが・・・今、とんでもないワードが聞こえて来た様な気がしたので、思わず踵を返してしまう。
「今、何と・・・?フレイヤ、ハンメルン・・・?ハンメルンって言ったのか?!」
「・・・へ?!あ、はぁ・・・だってここにそう書いてありますけど・・・?」
指が差された先にあるゴシップ紙を強引に取ると、その箇所を食い入る様に読んでしまった。
途端、俺の中で疑問符だった点が点と繋がり線へとなった。
「──くそっ!そういう事か・・・!」
「へ・・・?あ、分隊長・・・?!何処へ──っ?!」
途端、マチルダ嬢の身が気になってしまった俺は、部下の問いかけを一切無視して全速力で馬舎に戻ると・・・直感を信じて再度愛馬に跨り郊外へと走った——。
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