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番外編〜二人のその後〜
幕間 エマの苦悩 1
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「エマ・・・最近、フレイの様子がおかしいんだ・・・。何か聞いてないかい?」
お初にお目に掛かります、皆様。
私の名前はエマ・アンカー。
この国で今や王族に次ぐ権力を持っていると巷で噂の、ハイネス公爵家で侍女長に就かせて頂いている者で御座います。
「何かとは・・・?具体的には何でしょうか?」
本来であれば私は屋敷で給仕するのがお仕事なのですが・・・
この度、ハイネス公爵家の一人息子で在らせられますエドマンド様が婚約をされましてーーー。
えぇ、何処ぞの貴族令嬢であれば私なんぞの出る幕など無かったのですが・・・
何せ、その昔・・・向かいの屋敷に住んでいた成金子爵の娘で今は没落してしまっている御令嬢と婚約をなさったものですから・・・
僭越ながら、旦那様からの指示のもと私が教育係として学園まで馳せ参じた訳で御座います。
そして本日は、そんな婚約者のフレイヤ様が学園で社交ダンスの補習を受ける唯一の日ですので・・・
私は男子寮にあるエドマンド様のお部屋で給仕をさせて頂いているという訳で御座います。
「僕に対して凄く警戒している様子で・・・。今日なんて、手を繋いだだけで全身カチカチに固まってしまっていたんだよ・・・!」
「エドマンド様ほどの美貌をお持ちでしたら・・・フレイヤ様に限らず、手を握られた女性は皆固まってしまうかと思われます。」
正直・・・心当たりは有りましたが、このエドマンド様はとかくフレイヤ様の事となると理不尽極まりないのです。
私が余計な事を口走ったとなってしまっては、敵いません。
「もしかして・・・婚約者の務めについて話をしたから、その所為だろうか?」
ーーーご名答で御座います。
と言って差し上げられないのがもどかしいですが・・・流石、エドマンド様。
フレイヤ様関連の事となると、恐ろしい位幼稚化してしまう所も御座いますが・・・
学園首席の頭脳に、隣国の言葉全てを巧みに操る能力、そして何よりも読心術に優れている。
まさに外交を任せられているハイネス公爵家の嫡男として、申し分ない逸材です。
「婚約者の務めについては・・・フレイヤ様に聞かれましたので答えましたが。」
「ふーん。何て答えたんだい?」
ーーーギクっ。
刺すように私を流し見るエドマンド様の姿に、別に間違いを伝えた訳でも無いのに、何故かそう思ってしまった。
「・・・・・・一般的なものをいくつかお答えさせて頂きました。」
焦っている内心を悟られぬ様にと背筋を伸ばして、そう答えて見せるがエドマンド様の瞳は未だに私を刺すように見据えている。
「まぁ良いよ。フレイが意識しているだけなら・・・。原因が分かれば対処は簡単だからね。」
「流石、エドマンド様で御座います。」
エドマンド様の目線から解放されて・・・取り敢えず一安心した私はそそくさと給仕に戻った。
(マトン様の気苦労を軽んじておりました・・・。まさかエドマンド様の言動一つにここまで神経がすり減らさせてしまうとはーーー。)
小さく溜息をつきたくなってしまったが・・・エドマンド様の前という事を咄嗟に思い出して飲み込んだ。
そもそも・・・私はフレイヤ様の事をそこまで良くは思っていない。
確かにエドマンド様のご機嫌取りは大変なのかもしれないが・・・わざわざ執事であるマトン様が彼女の為にと奔走し、
ただでさえお忙しい旦那様が彼女との婚約を滞りなく進める為にと、東の隣国にまで足を運んだのだ。
(フレイヤ様からすれば、エドマンド様との婚約は身に余る光栄の筈・・・。何故、こちらがここまでお膳立てをしてなくてはいけないのでしょうか・・・?)
そう思っていた矢先にーーー侍女長である自分まで学園へ駆り出されて、
あろう事かフレイヤ様専従メイドとして卒園までお仕えする様にと旦那様から言われたのだから……
彼女に対して好意を持てという方が無理だと思いませんか?
幼い頃のエドマンド様は・・・確かに太ってらっしゃいましたし、社交界での評判も酷いものでした。
そんなエドマンド様に好意を寄せて、舞踏会では庇ってくれたという話はハイネス公爵家の使用人の間では有名な話ですが・・・
元々、彼女は成金子爵の次女・・・。
エドマンド様の事を好いていたという訳ではなく、ハイネス公爵家に取り入りたくて必死でそうしたというだけの話なのでは?と私は今も昔も思っております。
それに今のエドマンド様は・・・大変、見目麗しく男性的魅力に溢れておいでです。
フレイヤ様なんかより・・・いえ、失礼致しました。高位貴族の御令嬢達でも・・・選びたい放題の筈です。
(西の隣国の王女様なんて・・・あんなに熱烈にアプローチをして下さっていたのに・・・。)
あんなに美しく女性的魅力に溢れていらっしゃった王女様。
私は滞在先としていた屋敷で一度すれ違っただけでしたが・・・その美しさに思わず息が止まりました。
こういう考え方は私自身、あまり好きではありませんが・・・それでも、この貴族界では奥方様は旦那様のアクセサリーの一種の様なものです。
美しければ美しい程、影響力が高ければ高い程・・・価値が有るとされています。
寝屋を共にするというだけでワァワァと騒ぎ立てて・・・格段、スタイルも良くなく見目美しい訳でも無い・・・。
王女様と婚姻を結べば・・・どれほどの財と権力を手に出来たことか・・・。
それこそ、ハイネス公爵家は未来永劫安泰というものでしたでしょう。
(それでも・・・エドマンド様が幸せになれるのであれば、私がフレイヤ様に仕える理由には十分なりますが・・・。)
お初にお目に掛かります、皆様。
私の名前はエマ・アンカー。
この国で今や王族に次ぐ権力を持っていると巷で噂の、ハイネス公爵家で侍女長に就かせて頂いている者で御座います。
「何かとは・・・?具体的には何でしょうか?」
本来であれば私は屋敷で給仕するのがお仕事なのですが・・・
この度、ハイネス公爵家の一人息子で在らせられますエドマンド様が婚約をされましてーーー。
えぇ、何処ぞの貴族令嬢であれば私なんぞの出る幕など無かったのですが・・・
何せ、その昔・・・向かいの屋敷に住んでいた成金子爵の娘で今は没落してしまっている御令嬢と婚約をなさったものですから・・・
僭越ながら、旦那様からの指示のもと私が教育係として学園まで馳せ参じた訳で御座います。
そして本日は、そんな婚約者のフレイヤ様が学園で社交ダンスの補習を受ける唯一の日ですので・・・
私は男子寮にあるエドマンド様のお部屋で給仕をさせて頂いているという訳で御座います。
「僕に対して凄く警戒している様子で・・・。今日なんて、手を繋いだだけで全身カチカチに固まってしまっていたんだよ・・・!」
「エドマンド様ほどの美貌をお持ちでしたら・・・フレイヤ様に限らず、手を握られた女性は皆固まってしまうかと思われます。」
正直・・・心当たりは有りましたが、このエドマンド様はとかくフレイヤ様の事となると理不尽極まりないのです。
私が余計な事を口走ったとなってしまっては、敵いません。
「もしかして・・・婚約者の務めについて話をしたから、その所為だろうか?」
ーーーご名答で御座います。
と言って差し上げられないのがもどかしいですが・・・流石、エドマンド様。
フレイヤ様関連の事となると、恐ろしい位幼稚化してしまう所も御座いますが・・・
学園首席の頭脳に、隣国の言葉全てを巧みに操る能力、そして何よりも読心術に優れている。
まさに外交を任せられているハイネス公爵家の嫡男として、申し分ない逸材です。
「婚約者の務めについては・・・フレイヤ様に聞かれましたので答えましたが。」
「ふーん。何て答えたんだい?」
ーーーギクっ。
刺すように私を流し見るエドマンド様の姿に、別に間違いを伝えた訳でも無いのに、何故かそう思ってしまった。
「・・・・・・一般的なものをいくつかお答えさせて頂きました。」
焦っている内心を悟られぬ様にと背筋を伸ばして、そう答えて見せるがエドマンド様の瞳は未だに私を刺すように見据えている。
「まぁ良いよ。フレイが意識しているだけなら・・・。原因が分かれば対処は簡単だからね。」
「流石、エドマンド様で御座います。」
エドマンド様の目線から解放されて・・・取り敢えず一安心した私はそそくさと給仕に戻った。
(マトン様の気苦労を軽んじておりました・・・。まさかエドマンド様の言動一つにここまで神経がすり減らさせてしまうとはーーー。)
小さく溜息をつきたくなってしまったが・・・エドマンド様の前という事を咄嗟に思い出して飲み込んだ。
そもそも・・・私はフレイヤ様の事をそこまで良くは思っていない。
確かにエドマンド様のご機嫌取りは大変なのかもしれないが・・・わざわざ執事であるマトン様が彼女の為にと奔走し、
ただでさえお忙しい旦那様が彼女との婚約を滞りなく進める為にと、東の隣国にまで足を運んだのだ。
(フレイヤ様からすれば、エドマンド様との婚約は身に余る光栄の筈・・・。何故、こちらがここまでお膳立てをしてなくてはいけないのでしょうか・・・?)
そう思っていた矢先にーーー侍女長である自分まで学園へ駆り出されて、
あろう事かフレイヤ様専従メイドとして卒園までお仕えする様にと旦那様から言われたのだから……
彼女に対して好意を持てという方が無理だと思いませんか?
幼い頃のエドマンド様は・・・確かに太ってらっしゃいましたし、社交界での評判も酷いものでした。
そんなエドマンド様に好意を寄せて、舞踏会では庇ってくれたという話はハイネス公爵家の使用人の間では有名な話ですが・・・
元々、彼女は成金子爵の次女・・・。
エドマンド様の事を好いていたという訳ではなく、ハイネス公爵家に取り入りたくて必死でそうしたというだけの話なのでは?と私は今も昔も思っております。
それに今のエドマンド様は・・・大変、見目麗しく男性的魅力に溢れておいでです。
フレイヤ様なんかより・・・いえ、失礼致しました。高位貴族の御令嬢達でも・・・選びたい放題の筈です。
(西の隣国の王女様なんて・・・あんなに熱烈にアプローチをして下さっていたのに・・・。)
あんなに美しく女性的魅力に溢れていらっしゃった王女様。
私は滞在先としていた屋敷で一度すれ違っただけでしたが・・・その美しさに思わず息が止まりました。
こういう考え方は私自身、あまり好きではありませんが・・・それでも、この貴族界では奥方様は旦那様のアクセサリーの一種の様なものです。
美しければ美しい程、影響力が高ければ高い程・・・価値が有るとされています。
寝屋を共にするというだけでワァワァと騒ぎ立てて・・・格段、スタイルも良くなく見目美しい訳でも無い・・・。
王女様と婚姻を結べば・・・どれほどの財と権力を手に出来たことか・・・。
それこそ、ハイネス公爵家は未来永劫安泰というものでしたでしょう。
(それでも・・・エドマンド様が幸せになれるのであれば、私がフレイヤ様に仕える理由には十分なりますが・・・。)
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