【完結】豚公爵様は、実はスパダリ?!~ただ一緒に居ただけの没落令嬢な私が、何故か溺愛されています~

ゆきのこ

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本編

恨みっこなしね。

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「ごめん・・・。フレイ、僕のせいで・・・。」

夜風に当たると流石に濡れた箇所が冷たくて仕方が無かった為、一先ず私達二人は、女子寮にある私の部屋へと戻って来ていた。

本来ならば女子寮への男子生徒の入室は、固く禁じられているのだが・・・私の濡れたドレス姿を見た寮母さんから特例で1時間限定でお許しが出た。

「エドのせいなんかじゃないし・・・私は全然平気だから、そんな悲しそうな顔しないで?」

そんな訳で、私の部屋で叱られた犬の様にしょんぽりしているエドマンドを慰めている。

私の部屋で待機してくれていた侍女さんが、慌ててドレスの着替えを手伝って下さり、温かい飲み物を淹れてくれたので、今はそれを頂いている。

「でも・・・。」

「魔法は遅かれ早かれ解けるものよ・・・。私の魔法は、0時の鐘の音よりも早く解けたってだけでね。」

昔読んだ絵物語で・・・使用人としてこき使われていた女性が、魔法で綺麗に着飾ってお城の舞踏会にこっそり行き、王子様とダンスを踊るっていうお話があったが・・・

まぁ結局は、0時の鐘の音で魔法が解けてしまって、王子様に名乗る事も出来ないまま逃げ帰るのだ。

つまりーーー、
魔法はずっとは続かない。
必ず、いつかは解ける。
それはもう昔から決まっている事なのだ。

「それに・・・エドが私の為に怒ってくれたから、もう十分!素敵なドレスでダンスも踊れたし・・・本当に夢みたいな時間だったわ!有難う。」

本心からそう伝えたのだが・・・エドマンドはずっと俯きがちだ。

「フレイ・・・でも、怖かったろう?」

怖くなかったと言えば嘘になる。
正直、水を掛けられた時はパニックで頭もついていけなかった。

だけどーーー、ね。

でもーーー、ねぇ~

「こ、怖いのは一瞬だけだったから全然平気よ・・・!」

エドマンドにお姫様抱っこされてからは、正直、もう何も考えないように・・・意識しないようにする事に全神経を集中させていた為、あんまり他の事は覚えていないのが本音だ。

(思い出しただけで・・・熱がぶり返す!あぁー!もう・・・っ!)

エドマンドに赤い顔を悟られ無いように、飲み物に手を伸ばし、ホットミルクをクビグビ飲んだ。

そんな私の様子を見て少し安心したのか、エドマンドに笑顔が戻った。

「エド・・・、今日は本当に有難う?そろそろ、お部屋へ帰る?寮母さんとの約束の時間もせまっているし・・・」

ふと時計を見ると、既に結構な時間が経ってしまっており・・・エドマンドにそう促した。

「そう・・・だね・・・。」

まだ何か気になる事でも有るのか・・・歯切れの悪い返事をしながら席を立ったエドマンドに、思わず首を傾げてしまう。

「まだ何か気になる事でも有るの・・・?」

するとエドマンドが何か合図でも出したのか、いそいそとキッチンの方へと侍女が行ってしまい、二人きりになったダイニングに・・・少し緊張感を覚える。

「フレイ・・・本当は、舞踏会を楽しんで貰えたら、その褒美として欲しいものがあったんだけど・・・流石に駄目だよね?」

「え?私であげられる物なら・・・喜んで!」

それでエドマンドが負い目を感じる事なく、今日という日を終えられるのなら・・・安いものだ。

それに結果はどうであれ、私としては本当に楽しかったし、嬉しかったのだ。
エドマンドには感謝しか無い・・・!

「でも・・・僕も初めてだし・・・フレイも初めてかも・・・?それでも良い?」

(・・・・・・?え、何それ、謎謎?!)

俯きながらチラチラと視線だけは、こちらに寄越すエドマンドの意地らしいその態度に・・・寮母さんとの約束の時間も迫っていた事も相まってしまい・・・私は少し強めに返事をしてしまう。

「お互い初めてなら大丈夫よ!失敗しても恨みっこ無しね!!さぁ・・・っ、どうぞ?!」

何をされるのか皆目見当も付いていなかったが・・・何となく、手を広げてエドマンドを待ち構えてみた。

「恨みっこ無しね・・・。」

 そう呟いてこちらに歩いてくるエドマンドの顔は何故か・・・ニヤリという表現がピッタリの笑みを浮かべている。

途端、嫌な予感が全身を駆け巡ったが・・・ここまで来て「やっぱり駄目!」とも言えなくなってしまったら私は・・・手を広げたまま何とか耐えた。

「え、エド?痛い事じゃないよね?」

「勿論、そんな事する訳無いじゃないか・・・」

私の肩に両手を置いて満面の笑みでそう答えるエドマンドを、もう信じるしかない。

「フレイ・・・目を瞑らないの?」

(ーーーえ?!目を閉じるものなの?!!)

恐怖心が無かった訳では無いが・・・信じるしかないと言った矢先の事だったので、言われるがまま、目を閉じる。

(ん・・・?何となく?、エドマンドが近付いて来ている様な・・・?)

エドマンドの髪だろうか・・・?
頬に当たる何かがくすぐったくて、手で髪を払いたい気持ちをぐっと我慢する。

(くすぐったいよ~!早くして、エド~!)

そう思っていたら・・・次は、鼻先を何かが掠める。

柔らかい・・・何だろう?
鼻かな・・・?

(えーーー。鼻っ?!!)



ーーーちゅっ。



「ーーーっ?!!!!」

凄くエドマンドの顔が近付いている事に気付いたその瞬間の出来事だったーーー。

かつて感じた事の無い感触を唇に感じた私は、思わず目を見開いてしまう。

予想通りと言うべきか・・・、やはり、私はエドマンドにーーー



キス・・・されていた。



(きゃああああああ!!!!)

と、本当は叫び出したい位だったが・・・何とか堪えた。

「やっぱり・・・!フレイも初めてだったんだね・・・!あぁ、良かった!」

「はぁ?!なな、何が良かったのよ・・・!」

私の真っ赤な顔と様子から・・・どうやら初めてだとバレてしまったらしい。

何故か心底嬉しそうにエドマンドに良かったと言われたものだから・・・咄嗟にそう反論するが、頭の中はもうパニックで・・・心臓が苦しくて呼吸困難になりそうな勢いである。

「今日はとても良い夢が見れそうだよ、有難う?フレイ」

「ちょ・・・っ?!え、あ、まぁ・・・どういたしまして?」

ガバっとエドマンドに抱き締められた私は、咄嗟に解こうと一瞬は抵抗したものの・・・

(まぁ、今日位は良いかな・・・?だって、凄く気持ち良いし。)

と、今日だけはと言い訳をしながら自分を甘やかして・・・そのままエドマンドの背中に手を回した。

その心地よい空間に身を委ねてしまっていた私は・・・

フレイの意味を聞かなかった事を激しく後悔し、一人で悶々と考え込んでしまう事となる。
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