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本編
君達の様な子、虫唾が走るんだよ
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「エドマンド様・・・!実は、不注意でボーイとぶつかってしまわれたみたいで・・・フレイヤ様のお召し物が汚れてしまった様なのですーーー。」
(いや・・・、ええぇぇぇ?!!)
ご令嬢の嘘に思わず驚いてしまったのも然る事乍ら、コロリと変わった態度を見てようやく狙いが分かった。
社交界では・・・エスコートを受けた女性が途中退場した場合に限り、残された殿方は誰と何回でもダンスを踊っても良いし・・・もっと極端な事を言えば、何人侍らせても良いとされている。
つまり、無法地帯状態になるのだ。
ふふふ・・・。
私がそんな暗黙ルール覚えている訳ないって高を括っているようだけどねーーー
没落してもう何年も経ってるけど・・・そういう無駄な事だけは覚えてるものなのよ!
(絶対に帰らねぇ!!こんな肉食獣の中にエドマンドを置いて帰れないわ!!)
「フレイ・・・、大丈夫かい・・・?」
「あ、大丈夫です。幸い、掛かったのもお水だったので。」
鼻息荒い私を心配そうに覗きこむエドマンドは、
水を掛けられた私よりも顔が青ざめている様子だ。
何とか気丈に振る舞っては見たものの・・・本音を言えば、今すぐ後ろのご令嬢に掛けられたんです!と糾弾してやりたい所である。
そんな私達の様子などお構いなしのご令嬢は、エドマンドの肩に美しい手をそっと置くと、鳥肌が立ちそうな程の猫なで声でエドマンドへ擦り寄る。
「エドマンド様・・・、フレイヤ様はお帰しになった方が宜しいかと思いますわ。こんなずぶ濡れの姿で舞踏会に居続けるなど・・・笑い者にされてしまうだけですし。ーーーそれで、エドマンド様のエスコートですが・・・もし宜しければ、私とー」
「抜け駆けは無しですわよ!」
「そうですわ!約束は守って下さいませ!」
私を完全に場外へと押しやるように始まった令嬢達の醜い争いに、呆然と立ち尽くしてしまう。
(私まだ・・・帰るなんて、一言も言ってないんですけどーーー?!)
ご令嬢達に思わず心の中で声高に叫んだ。
実際に言っても良かったのだが・・・恐らく聞こえないフリをされて終わりだろう。
でも、エドマンドに帰った方が良いと言われたら・・・帰る他ない。
エドマンドに恥をかかせる訳にはいかないし、何より惨め過ぎる・・・。
そう思い、エドマンドの言葉を待とうと覚悟を決めた時だったーーー
「はは、あははははは・・・!!!」
エドマンドの高笑いがホール内に響いた・・・
揉めていたご令嬢達は勿論のこと、周りの生徒達までもがエドマンドの方へと視線を向け始めた。
「君達をエスコートだって?ーーー笑わせないでおくれよ。」
エドマンドの顔から笑顔が消えて・・・令嬢達を見下ろすその瞳はどんどん険しくなっていく。
「僕、君達の様な子、虫唾が走るんだよ。ーーー死んでも御免だよ、エスコートだなんて。」
そこで初めてエドマンドがとても怒っていると全員が気付いた。
「ひっ!!」
ご令嬢方はよほど怖い顔でエドマンドに睨まれてしまったのか、カタカタと小刻みに震えている。
かくいう私も、生まれて始めてエドマンドのこんな怒っている姿を目の当たりしたので・・・ちょっと、いやかなり怖い。
恐怖心を抑えて、何とかエドマンドに声を掛ける。
「エド・・・?」
「ーーー行こうフレイ。」
狼狽えるご令嬢達には目もくれず、真っ直ぐ私の元へとやって来たエドマンドに・・・手でも引かれるのかと思いきやーーー
「・・・・・・・・・?!」
「少しだけ我慢して。」
ふわっと体が一瞬浮いたかと思えば、眼前にエドマンドの顔があった。
耳元で囁かれたその声も・・・息遣いまでもが感じられる程の距離に頭が沸騰してしまう。
所謂、お姫様抱っこというものをされて・・・思わず叫んでしまいそうになった口を手で覆った。
(きゃぁぁぁ!まさか・・・、エドにお姫様抱っこされる日が来るとは・・・!)
エドマンドの体の感触と・・・、触れてしまいそうな程の距離にある顔に、言うまでもなく私の心臓はドキドキしっ放しで・・・
会場を出るその瞬間まで、周りの目など気にする余裕は無く、ひたすらエドマンドの事だけを考えていたーーー。
(いや・・・、ええぇぇぇ?!!)
ご令嬢の嘘に思わず驚いてしまったのも然る事乍ら、コロリと変わった態度を見てようやく狙いが分かった。
社交界では・・・エスコートを受けた女性が途中退場した場合に限り、残された殿方は誰と何回でもダンスを踊っても良いし・・・もっと極端な事を言えば、何人侍らせても良いとされている。
つまり、無法地帯状態になるのだ。
ふふふ・・・。
私がそんな暗黙ルール覚えている訳ないって高を括っているようだけどねーーー
没落してもう何年も経ってるけど・・・そういう無駄な事だけは覚えてるものなのよ!
(絶対に帰らねぇ!!こんな肉食獣の中にエドマンドを置いて帰れないわ!!)
「フレイ・・・、大丈夫かい・・・?」
「あ、大丈夫です。幸い、掛かったのもお水だったので。」
鼻息荒い私を心配そうに覗きこむエドマンドは、
水を掛けられた私よりも顔が青ざめている様子だ。
何とか気丈に振る舞っては見たものの・・・本音を言えば、今すぐ後ろのご令嬢に掛けられたんです!と糾弾してやりたい所である。
そんな私達の様子などお構いなしのご令嬢は、エドマンドの肩に美しい手をそっと置くと、鳥肌が立ちそうな程の猫なで声でエドマンドへ擦り寄る。
「エドマンド様・・・、フレイヤ様はお帰しになった方が宜しいかと思いますわ。こんなずぶ濡れの姿で舞踏会に居続けるなど・・・笑い者にされてしまうだけですし。ーーーそれで、エドマンド様のエスコートですが・・・もし宜しければ、私とー」
「抜け駆けは無しですわよ!」
「そうですわ!約束は守って下さいませ!」
私を完全に場外へと押しやるように始まった令嬢達の醜い争いに、呆然と立ち尽くしてしまう。
(私まだ・・・帰るなんて、一言も言ってないんですけどーーー?!)
ご令嬢達に思わず心の中で声高に叫んだ。
実際に言っても良かったのだが・・・恐らく聞こえないフリをされて終わりだろう。
でも、エドマンドに帰った方が良いと言われたら・・・帰る他ない。
エドマンドに恥をかかせる訳にはいかないし、何より惨め過ぎる・・・。
そう思い、エドマンドの言葉を待とうと覚悟を決めた時だったーーー
「はは、あははははは・・・!!!」
エドマンドの高笑いがホール内に響いた・・・
揉めていたご令嬢達は勿論のこと、周りの生徒達までもがエドマンドの方へと視線を向け始めた。
「君達をエスコートだって?ーーー笑わせないでおくれよ。」
エドマンドの顔から笑顔が消えて・・・令嬢達を見下ろすその瞳はどんどん険しくなっていく。
「僕、君達の様な子、虫唾が走るんだよ。ーーー死んでも御免だよ、エスコートだなんて。」
そこで初めてエドマンドがとても怒っていると全員が気付いた。
「ひっ!!」
ご令嬢方はよほど怖い顔でエドマンドに睨まれてしまったのか、カタカタと小刻みに震えている。
かくいう私も、生まれて始めてエドマンドのこんな怒っている姿を目の当たりしたので・・・ちょっと、いやかなり怖い。
恐怖心を抑えて、何とかエドマンドに声を掛ける。
「エド・・・?」
「ーーー行こうフレイ。」
狼狽えるご令嬢達には目もくれず、真っ直ぐ私の元へとやって来たエドマンドに・・・手でも引かれるのかと思いきやーーー
「・・・・・・・・・?!」
「少しだけ我慢して。」
ふわっと体が一瞬浮いたかと思えば、眼前にエドマンドの顔があった。
耳元で囁かれたその声も・・・息遣いまでもが感じられる程の距離に頭が沸騰してしまう。
所謂、お姫様抱っこというものをされて・・・思わず叫んでしまいそうになった口を手で覆った。
(きゃぁぁぁ!まさか・・・、エドにお姫様抱っこされる日が来るとは・・・!)
エドマンドの体の感触と・・・、触れてしまいそうな程の距離にある顔に、言うまでもなく私の心臓はドキドキしっ放しで・・・
会場を出るその瞬間まで、周りの目など気にする余裕は無く、ひたすらエドマンドの事だけを考えていたーーー。
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