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本編
爺やの手の中
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「あと・・・これはきちんと初日に伝えるべき事だったんだけど・・・」
「・・・?」
とても言い出しにくい事なのか・・・チラチラと私の様子を伺うエドマンドに首を傾げる。
「僕はフレイにただ会いたくて・・・此処に呼んだんだ。ーーー〝メイド〟が欲しかった訳では無いんだよ?」
(・・・・・・・ん?つまりどういう事だ?)
「え、えぇ。そうよね?だってメイドが欲しいだけなら、ハイネス公爵邸にもっと優秀なメイドが沢山居たでしょうから・・・?」
私の返事が的を得て無かったのか・・・エドマンドは小さく首を横に振ると再度口を開いた。
「だからね・・・つまり・・・フレイに断られないようにと・・・爺やが勝手にフレイを〝メイド〟として連れて来ただけの話で・・・僕自身はメイドとしてフレイを呼んだつもりは無いって事。」
「・・・え?」
一瞬・・・、エドマンドの言っている意味が理解出来なかった。
私にとってエドマンドのその言葉は、それ程の衝撃的発言だった。
(た、確かに・・・。メイドとしてっていう名目が無ければ、流石に申し訳なさ過ぎて断っていたかもしれないけれど・・・。)
「いや!隠しているつもりは無かったんだ・・・!でも、フレイが本当に何も聞かされていない様子だから・・・。」
(ちょっと待って・・・!ちょっと待ってね・・・!えーと?頭が追いつかなくなって来たぞ?)
つまり・・・エドマンド自身は私をただ、この学園に入学させたかっただけって事・・・?
それで同じクラスで学園生活を送りたかったとか・・・?
はたまた、ハイネス公爵様が橋を次々と掛けたせいで我が家が没落したと勘違いして、負い目を感じて罪滅ぼししたかったとか・・・?
そういう事なのだろうか・・・。
でも実際は・・・私に断られると色々と都合が悪い爺やの策略で、私はメイドとして雇い入れられて此処に連れて来られちゃったって事・・・なのか?
「実は僕も・・・大まかな契約内容を爺やから聞かされたのはフレイが来た日のことで・・・、だからその・・・メイド服を用意していなかったり・・・使用人部屋じゃ無くて女子寮の部屋を用意していたのは・・・そういう事なんだよ。」
確かに・・・。
男爵令嬢に宛てがわれる様な分不相応なお部屋に、クローゼットには端から端までドレスが掛けられていた・・・。
おまけに私の為にと・・・高級なティーセットを用意していたり、茶葉を用意していたり。
まるで・・・私をもてなしたいかの様な行動の数々だった・・・。
でも、それなら・・・、
「ちょっと待って・・・!?でも・・・じゃあ、エドのお世話をするメイドは・・・?」
「本当に爺やから何も聞かされて無いんだね・・・?父上に頼んで、フレイを入学させる為の資金に回して貰ったんだよ。だから僕の使用人は最初からただ居ないだけで・・・別にフレイがメイドとしてやって来る為なんかじゃ無いよ?」
「で、でも!私がメイドとして作業をしていても何も言わなかったじゃない!・・・確かに、エドから仕事を指示された事は無かったけれど・・・。」
「余りにもフレイが『メイドとして~、メイドだから~、』って声高に言うもんだから・・・、『メイドなんかしなくても良い』って言えなかったんだよ・・・。それに、契約通り働いて貰えば、とりあえず給金としてお金も渡せるし・・・フレイが出来る範囲でやって貰えば良いと思って・・・。」
そこまで聞いて私はやっと、エドマンドのとんでもないぶっ飛んだ行動の数々に合点がいったのと同時に・・・今まで私達2人の間に有った温度差の理由をようやく知った。
「ご、御免なさい・・・。私、爺やから何にも聞いてなくって・・・。」
「いや僕も・・・まさか爺やが本当に何もフレイに告げていなかったとは思っていなくて・・・。」
恥ずかしさの余りエドマンドの顔を見る事が出来なくなってしまった私は・・・俯いた顔を上げる事が出来なかった。
気の利いた言葉が思い浮かばず黙りこくって居ると・・・エドマンドも同じなのか、気まずい空気と沈黙が寝室を支配したーーー。
「ぷっ・・・あははは!」
「フレイ・・・?どうしたの?」
先程まで泣きそうな位しんみりとしていたのに・・・2人揃って爺やにまんまとしてやられているこの状況に、何だか可笑しくなってしまった私は、我慢出来ずにお腹を抱えて笑い出してしまった。
「だって、爺やにまんまと私達2人踊らされて・・・喧嘩までしちゃってるのよ?可笑しくない?」
「ははっ・・・確かに、そうだね。」
薬が効いてきたからなのか・・・それとも私に話たい事を話せて気分が軽くなったのか・・・
少し顔色が良くなったエドマンドの姿にホッと胸を撫で下ろす。
「エド・・・本当に裏庭では・・・ひどい事を言ってしまって御免なさい・・・。」
「僕の方こそ・・・色々と迷惑ばかりかけちゃって・・・ごめんね。」
仲直りの握手を交わした私達2人は・・・
その手を解くのが何となく惜しくて・・・
エドマンドが眠りに着くその時まで繋いでいた。
★おまけ
フレイ「じゃあ、あのメイド服は・・・?どうして作ってくれたの?」
エド「フレイは作業が云々、ハイネス公爵家の品位が云々って言っていたけど・・・僕の感覚としては・・・、ただ洋服を強請られたから、誂えたっていう感覚なんだけど・・・。」
フレイ「・・・え?爺やにお願いしたんじゃなかったの?」
エド「あ、しまった。」
フレイ「エド~?」
エド「ま、待って!フレイ!冷静に考えて見てよ!!・・・きっと、爺やにお願いしたって同じ様な事になっていたさ!」
フレイ「・・・・・・・・・。確かに。」
★終わり
「・・・?」
とても言い出しにくい事なのか・・・チラチラと私の様子を伺うエドマンドに首を傾げる。
「僕はフレイにただ会いたくて・・・此処に呼んだんだ。ーーー〝メイド〟が欲しかった訳では無いんだよ?」
(・・・・・・・ん?つまりどういう事だ?)
「え、えぇ。そうよね?だってメイドが欲しいだけなら、ハイネス公爵邸にもっと優秀なメイドが沢山居たでしょうから・・・?」
私の返事が的を得て無かったのか・・・エドマンドは小さく首を横に振ると再度口を開いた。
「だからね・・・つまり・・・フレイに断られないようにと・・・爺やが勝手にフレイを〝メイド〟として連れて来ただけの話で・・・僕自身はメイドとしてフレイを呼んだつもりは無いって事。」
「・・・え?」
一瞬・・・、エドマンドの言っている意味が理解出来なかった。
私にとってエドマンドのその言葉は、それ程の衝撃的発言だった。
(た、確かに・・・。メイドとしてっていう名目が無ければ、流石に申し訳なさ過ぎて断っていたかもしれないけれど・・・。)
「いや!隠しているつもりは無かったんだ・・・!でも、フレイが本当に何も聞かされていない様子だから・・・。」
(ちょっと待って・・・!ちょっと待ってね・・・!えーと?頭が追いつかなくなって来たぞ?)
つまり・・・エドマンド自身は私をただ、この学園に入学させたかっただけって事・・・?
それで同じクラスで学園生活を送りたかったとか・・・?
はたまた、ハイネス公爵様が橋を次々と掛けたせいで我が家が没落したと勘違いして、負い目を感じて罪滅ぼししたかったとか・・・?
そういう事なのだろうか・・・。
でも実際は・・・私に断られると色々と都合が悪い爺やの策略で、私はメイドとして雇い入れられて此処に連れて来られちゃったって事・・・なのか?
「実は僕も・・・大まかな契約内容を爺やから聞かされたのはフレイが来た日のことで・・・、だからその・・・メイド服を用意していなかったり・・・使用人部屋じゃ無くて女子寮の部屋を用意していたのは・・・そういう事なんだよ。」
確かに・・・。
男爵令嬢に宛てがわれる様な分不相応なお部屋に、クローゼットには端から端までドレスが掛けられていた・・・。
おまけに私の為にと・・・高級なティーセットを用意していたり、茶葉を用意していたり。
まるで・・・私をもてなしたいかの様な行動の数々だった・・・。
でも、それなら・・・、
「ちょっと待って・・・!?でも・・・じゃあ、エドのお世話をするメイドは・・・?」
「本当に爺やから何も聞かされて無いんだね・・・?父上に頼んで、フレイを入学させる為の資金に回して貰ったんだよ。だから僕の使用人は最初からただ居ないだけで・・・別にフレイがメイドとしてやって来る為なんかじゃ無いよ?」
「で、でも!私がメイドとして作業をしていても何も言わなかったじゃない!・・・確かに、エドから仕事を指示された事は無かったけれど・・・。」
「余りにもフレイが『メイドとして~、メイドだから~、』って声高に言うもんだから・・・、『メイドなんかしなくても良い』って言えなかったんだよ・・・。それに、契約通り働いて貰えば、とりあえず給金としてお金も渡せるし・・・フレイが出来る範囲でやって貰えば良いと思って・・・。」
そこまで聞いて私はやっと、エドマンドのとんでもないぶっ飛んだ行動の数々に合点がいったのと同時に・・・今まで私達2人の間に有った温度差の理由をようやく知った。
「ご、御免なさい・・・。私、爺やから何にも聞いてなくって・・・。」
「いや僕も・・・まさか爺やが本当に何もフレイに告げていなかったとは思っていなくて・・・。」
恥ずかしさの余りエドマンドの顔を見る事が出来なくなってしまった私は・・・俯いた顔を上げる事が出来なかった。
気の利いた言葉が思い浮かばず黙りこくって居ると・・・エドマンドも同じなのか、気まずい空気と沈黙が寝室を支配したーーー。
「ぷっ・・・あははは!」
「フレイ・・・?どうしたの?」
先程まで泣きそうな位しんみりとしていたのに・・・2人揃って爺やにまんまとしてやられているこの状況に、何だか可笑しくなってしまった私は、我慢出来ずにお腹を抱えて笑い出してしまった。
「だって、爺やにまんまと私達2人踊らされて・・・喧嘩までしちゃってるのよ?可笑しくない?」
「ははっ・・・確かに、そうだね。」
薬が効いてきたからなのか・・・それとも私に話たい事を話せて気分が軽くなったのか・・・
少し顔色が良くなったエドマンドの姿にホッと胸を撫で下ろす。
「エド・・・本当に裏庭では・・・ひどい事を言ってしまって御免なさい・・・。」
「僕の方こそ・・・色々と迷惑ばかりかけちゃって・・・ごめんね。」
仲直りの握手を交わした私達2人は・・・
その手を解くのが何となく惜しくて・・・
エドマンドが眠りに着くその時まで繋いでいた。
★おまけ
フレイ「じゃあ、あのメイド服は・・・?どうして作ってくれたの?」
エド「フレイは作業が云々、ハイネス公爵家の品位が云々って言っていたけど・・・僕の感覚としては・・・、ただ洋服を強請られたから、誂えたっていう感覚なんだけど・・・。」
フレイ「・・・え?爺やにお願いしたんじゃなかったの?」
エド「あ、しまった。」
フレイ「エド~?」
エド「ま、待って!フレイ!冷静に考えて見てよ!!・・・きっと、爺やにお願いしたって同じ様な事になっていたさ!」
フレイ「・・・・・・・・・。確かに。」
★終わり
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